あ行     99年夏以降劇場で観た新作映画の感想です (基本的にビデオ・DVD鑑賞した作品は含みません)
アーティスト
アイアムアヒーロー 
アイアムサム 
アイ・アム・レジェンド
アイズ・ワイド・シャット 
愛と誠
アイム・ソー・エキサイテッド 
アイリス 
蒼き狼
あかね空 
赤目四十八瀧心中未遂
悪人
悪魔探偵
アザーズ 
明日への遺言
明日へのチケット
アトランティスのこころ
アナライズ・ミー
あの頃ペニーレインと

アバター 
アビエイター
アフタースクール
アマルフィ女神の報酬
アメリ
 
アメリカン・ギャングスター 
アメリカン・スナイパー 
アリス・イン・ワンダーランド 
アリスのままで 
歩いても歩いても
あるいは裏切りという名の犬 
アメリカン・ビューティ
アメリカン・ヒストリーX
歩いても歩いても
ある子供
アルゴ
アルゼンチンババア
アンカーマン
アンブレイカブル
アンジェラの灰
イーグル・アイ
イースタン・プロミス
イエスマン"YES"は人生のパスワード

家の鍵
硫黄島からの手紙 
怒り 
息もできない

活きる
いけちゃんとぼく
いつか眠りにつく前に
イブラヒムおじさんとコーランの花たち
 
イミテーション・ゲーム 
イルマーレ
インサイダー

インソムニア
インディー・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
インスタント沼
インファナル・アフェアV
ウィンドトーカーズ
ヴィーナス
ヴィヨンの妻
ウール100%
ウォーターボーイズ
ウォルター少年と夏の日
ウォッチメン
うた魂♪
UDON

宇宙戦争
うつせみ
姑獲鳥の夏
海辺のレストラン
海を飛ぶ夢
浮気な家族

ウルフ・オブ・ウォールストリート
ウルトラミラクルラブストーリー
ヴェニスの商人
ヴェラ・ドレイク
永遠の僕たち
英国王 その給仕人に乾杯!
エイプリルの七面鳥 
エイプリルフールズ 
エニイギブンサンディ
エターナル・サンシャイン
エディット・ピアフ
エヴァの告白 
Xミッション 
エリザベス:ゴールデン・エイジ
L.A.ギャングストーリー 
エレジー
エンド・オブ・デイズ


オアシス
おいしい生活
王妃の紋章
大奥
王の男
オーケストラ!
おくりびと
鬼が来た!
ALWAYS三丁目の夕日
ALWAYS続三丁目の夕日
ALWAYS三丁目の夕日'64
おおかみこどもの雨と雪
オールドボーイ
オールド・ルーキー

オーロラの彼方へ
男たちの大和 
オデッセイ 
おとなのけんか
おばあちゃんの家 
おみおくりの作法 
俺たちフィギュアスケーター
女の子ものがたり





2016/9/28 【 怒り 】

「怒り」を観た。
悪人」を手掛けた原作者の吉田修一と、李相日監督が6年振りにタッグを組んだ作品。いやぁ今回も2時間20分だれることなく圧倒される。
東京八王子で発生した未解決の凄惨な一家惨殺事件。壁には「怒」の血文字が残され犯人は整形して逃亡。
そんな時、千葉・東京・沖縄に現れた身元不明の男をめぐるそれぞれの状況は全く別であるけれど「人を信じること」の意味を問いかける。信じるということは疑うことの対極にあって、疑いを持ち始めてからの苦悩を赤裸々に描き出す。
千葉では偽名を使っている青年と恋に落ちる愛娘へのビミョウな父の距離感が秀悦。東京で描かれるゲイカップルの住所不定無職という片方のなんとも線の細いはかなさが印象的。沖縄では高校生と無人島で暮らす謎のバックパッカーとの交流に心が切り裂かれそうになる米軍基地の問題を絡めている。
キャストが豪華で交差する3つのドラマから人間の揺れ動く感情がむき出しとなって強いメッセージを投げかけてくるなんともヘビーな力作だった。





2016/5/13 【 アイアムアヒーロー 】
アイアムアヒーロー」を観た。
「ビッグコミックスピリッツ」で連載中の花沢健吾のベストセラーコミックを実写映画化。
ゾンビ映画ということでB級かとタカをくくっていたら、日本公開前に海外の映画祭で旋風をまきおこし受賞までしているとのこと。
冒頭の漫画家アシスタント仲間とのやりとりなどに、うだつの上がらない現実が描かれる。ここですっかり気を許して鑑賞していたので、英雄の彼女‘てっこ’のゾンビへの変貌シーンに、これはもしかしてホラーかとあまりの恐怖に凍り付いてしまった。このZQN(ゾキュン)化の後に終盤までこれでもかとZQNが大量発生するのだけれどここが一番怖かった。
その次の職場シーンでは漫画家アシスタント仲間のドランクドラゴンの塚地のおっとりしたキャラでのスプラッターはギャップがお見事。タクシーの中でのパニックはかなりスリリングで無事故無違反の運転手のZQNぶりはユーモラス。こうしてアウトレットモールにたどり着くまでの展開は息つく間もないくらいスピーディー。
ゾンビものではガンガン撃って撃退するのがお約束ながら主人公の英雄(大泉洋)が銃を持たない日本において趣味で猟銃所持の免許があるというのがミソ。
当初、街中で引き金を引くこともできなかった主人公が逃げる途中でたまたま出会った女子高生が感染者???という状況でも「君を守る」ことができるのかを、現実逃避的だったヒデオ→英雄→ヒーローという構図とうまくリンクさせていく。
人間同士の疑心暗鬼の要素も入れ、R15指定ということで容赦ない残虐さでグロい血どばっのシーンが続く。
ZQNが人間だった時の一番強い感情に縛られているというのも哀れで、ひとつひとつのZQNのクォリティはおそろしく高く、十把一絡げにしていないのは素晴らしい。





2016/3/20 【 オデッセイ

オデッセイ」を観た。
事故により一人火星に取り残されるという究極でサバイバルする主人公ワトニーをマットディモンが好演。
次に調査船が来るのは4年後で水もなく残された食料はわずか・・・絶望以外の何物でもない中、科学を武器に頭脳を駆使してハンパない行動力で難題をクリアしていく姿には魅せられる。
絶体絶命の大ピンチの時こそ人間の本性が表れるものだとしたら、ギャグをかましユーモアに溢れたキャラクターも別次元の頼りがいにも敬服。
仲間のクルーが残していったディスコ・ミュージックもストーリーとシンクロして功を奏している。
まさかこのサバイバル映画がこんなに明るいものだとは想像していなかったこともあって本当に味付けの上手さに感心。
試練を乗り越えようとする基盤が科学だからなんだか現実的かわからないながら説得力がある。
折れない心に元気がもらえるスーパーポジティブな作品。
ただ唯一アメリカのNASAと並んで描かれる世界最高の頭脳集団が中国というのはマーケットを意識したものだとしたらなんだかなぁ。ロシアじゃないなら昨年世界を驚かせたインドとかだったら良かったのに。





2016/2/21 【  Xミッション 】
X-ミッション」を観た。
「世界トップアスリートによる、至上最もガチなアクション!」というだけあって、モトクロス、サーフィン、スノーボード、ウィングスーツフライング、ロッククライミングなど全てが、まぁとてもCGなしとは思えなく超超超人間離れしたアクションは本当にお見事。
休む間もなく仲間が一人また一人と脱落していくプロットが想定できるのでハラハラドキドキでもう怖くて正視できない。
FBI捜査官がアスリートチームによる犯罪集団に潜入するプロットにおいてその犯罪目的となっている8つの修練というのがどうもぼやけているのが難点。
多数のダイアモンドをを盗んでインド・ムンバイの貧民窟に撒き散らし、空飛ぶ現金輸送機から札束をメキシコの村の上空で解き放つなど、当初は貧しい地域へ向けた意図のある犯罪かとおもいきや、亡き活動家オザキが目指していた修養でそれは環境保全がどうのこうのだとかわかりにくい。
「オザキ8」が「フォースの噴出」「空の誕生」「大地の覚醒」「荒れ狂う水」「風の躍動」「氷の生命」「六命の極意」「究極の信頼」というものらしいけれどそれも観念的でさっぱり伝わってこない。
とってつけたようなストーリーが邪魔なのでただただアクションと自然の迫力を堪能するのが正しい鑑賞かも。





2015/4/16 【 エイプリルフールズ 】
エイプリルフールズ」を観た。
豪華出演者よりも「ALWAYS 三丁目の夕日」 「キサラギ」 「リーガル・ハイ」など実績のある古沢良太脚本に惹かれての鑑賞。が、期待が大きかったせいかあまりに散漫で拍子抜け。
「レストラン大惨事」「ロイヤル夫婦の休日」「ヤクザによる誘拐」「占い老婆」「宇宙人の少年」「42年ぶりの生還」「2人の大学生」の7つのオムニバスが微妙にからんでくる。とはいっても「キサラギ」のようにいくつもの伏せんがつながって行くアッと驚くストーリー展開にはほど遠い。
それぞれのエピソードになんらかのつながりはあるにはあるけれど面白くない。あり得ない報道番組の嘘報道も指名手配中の人物がレストランで堂々と食事なのも豪華なデートするのにわざわざ皇族を名乗るのも無理がある。一般女性が銃を撃つのも?だし、あのラストは本当にhappy endと呼べるのかもかなり疑問。
感情移入できない上にバカバカしく騒々しい場面が多いのもマイナス。




2015/4/14 【 おみおくりの作法 】

おみおくりの作法」を観た。原題は「Still Life」一見邦題によって「おくりびと」のイギリス版かとも思わせるようなマーケティングが見え見え。
死に関わる地味な職業の役柄ながらも「おくりびと」はイケメンのキャスティングなのに対しこちらは外見ばかりじゃなく内面も徹底的に地味。
自己主張せず‘ひとり’だけど孤独じゃない主人公ジョン・メイを演じたエディ・マーサンは賞賛に値する。効率を求める上司に疎まれながらも誠実で丁寧に仕事をし、故人を見送るために音楽を選び弔辞を読み写真をアルバムに収め故人一人一人に向き会う。
職業柄もあるにせよちゃんと眺めも日当たりも良い絶好の場所にお墓の準備もして‘その時’に備えているのもいかにもジョン・メイらしく、たとえ人生予定通りいかなくてもそれは決して不幸なことじゃないというのも目から鱗。
ジョン・メイは自分が納得するやり方で仕事をしたにすぎないのだけれど人の為に生きるっていうのはそれが故人のためであっても自分の幸せにつながってくる。

人知れず良いことをしても報われなく誰にも認められないことが多々ある人生だけれど、実は誰かがそれをちゃんと見ていてくれているんだよというあったかいメッセージも含まれていて、悲しいハズのラストなのに幸せな気持ちになれる素晴らしい作品。





2015/2/21 【 アリスのままで 】
アリスのままで」を観た。
ジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞を受賞。
若年性アルツハイマーに見舞われた主人公アリスと家族の苦悩を描く。
人一倍インテリで仕事と家庭を両立しエクササイズなど自分のケアも欠かさない順風な中での発症だけに、医者の「高学歴ほど・・・ 遺伝が・・・」は、あまりにストレートで実際そんなものだとしても容赦なくドライ過ぎるような。
自分ではどうしようもない症状の進行への不安や恐怖は正当派手法で淡々と描かれていく。
学者だけあって自分の今後を先読みした故の付せんに基づいてのある行動のシーンは思わず息をのんだ。
ただアルツハイマー患者がおかれる環境という点では、経済的に問題なくサポートしてくれる家族もいてかなり恵まれている例といえる。
「癌の方がマシ」という台詞は是非がありそうだけれど強烈に印象に残った。




2015/1/25 【 イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 】
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」を観た。
アカデミー賞脚本賞受賞。
英国政府が50年間も隠していた天才数学者アラン・チューリングの実話。それにても邦題長すぎる。あまり馴染みのない人物ということもあるのか副題が‘エニグマと天才数学者の秘密’というあまりに説明的でなんとセンスないことか。原題はシンプルに「The Imitation Game」。
字幕なしのブリテッィシュ英語は本当にきつくぼやっと内容はなぞっただけという理解度なので多くは語れない。
ちょっと変わり者の主人公は実はアスペルガー症候群だったということで、そのあたりは繊細なことだけに異質ぶりをユーモアを交えて描いたのは良かったと思う。カンバーバッチの名演が凄い。
‘エニグマ’の解読への過程もスリリングで、この人ありきの現在のコンピューターにつながっているまさに「天才数学者」ながらも、ある‘秘密’も含めて悲運の人生を歩んだことが不条理すぎる。
生まれる時代が悪すぎた。




2015/1/18 【 アメリカン・スナイパー 】
アメリカン・スナイパー」を観た。
アメリカ軍で160人以上を殺した最も強い狙撃手と言われる実在したクリス・カイルの自叙伝を元にしている。
ピンとはりつめた戦場の容赦ないシーンに胸がつまる。
アメリカの映画館で鑑賞したこともあって、ライバルのムスタファとの息をもつかせない戦いに決着が下りた時は歓声と拍手がおきた。
本作は敵サイドの市井の人々の状況も描かれていて、敵=ゾンビのように捕らえていないのも良かった。
唯一気になったのはネットでも盛り上がっているように赤ちゃんがいかにも人形な点でこのフェイクbabyの不自然さはもったいないことこの上ない。
想像もつかなかったクリスの‘その後‘はある意味ドラマティックすぎるとも言えるものであったけれど、そこを敢えて実際のニュースフィルムを流すことで間接的に描いたのは無音の効果もあって強烈にずしんとくる。
160人以上を殺したヒーローということでステレオタイプのアメリカ万歳的かというと とんでもなくそれとは対極の「殺されるも地獄、そして人を殺すも地獄」という“反戦映画なのがクリント・イーストウッド的とも言える。




2014/4/16 【 ウルフ・オブ・ウォールストリート 】

ウルフ・オブ・ウォールストリート」を観た。
26歳で証券会社を設立して年収約49億円を稼ぎ10年で破滅した伝説の実在するジョーダン・ベルフォートの物語の映画化。
ハチャメチャな半生を戒めを含めて説教臭く描くのではなく、まぁ自業自得でこーいう突き抜けた人生もアリかもと思わせられたのが良い意味で意外だった。
株式ブローカーとしての天才的な一面に現実的な何かヒントでも得ようと期待して鑑賞すると的外れな内容で、あくまで悪徳というかマルチ商法だし、社員をその気にさせる手腕はまるで新興宗教の洗脳のよう。
時代が時代とはいえドラッグも酒も想像を絶する下劣ぶりはもう苦笑するしかない。チラシにある「欲稼ぎ、欲遊び 欲笑え」が実に上手いっ。
ディカプリオは4度目の正直もならず今回もアカデミー賞を逃したけれど、エキセントリックな超肉食男子の怪演ぶりはハンパない。彼を追う堅物捜査官が地下鉄内で見せた表情が切ない。ジョーダンのような人生が幸せと言い切れないけれど、じゃあ地下鉄で通勤する市井の人々が幸せかどうかも言い切れないというやるせなさが印象的。
途中だれるシーンはないにしても2時間59分というのは長かった。





2014/3/16 【 アイム・ソー・エキサイテッド 】
アイム・ソー・エキサイテッド!」を観た。
トーク・トゥ・ハー」「ボルベール<帰郷>」などのドロッとした愛憎劇が印象深いペドロ・アルモドバル監督がこれまでと旗色の違うコメディーを撮った。
オネエ系客室乗務員やそれぞれ事情のある乗客が繰り広げる群像劇という意味では楽しめそうな予感はあったのだけれど、う〜ん 空回り。
一つ一つの騒動がつまらなく、それに加えて許容範囲を超えた下ネタにうんざり。コメディーと言われても笑いのツボが理解できない上にただその下品さにドン引き。
唯一楽しめたのは3人のオネエ客室乗務員によるタイトルの♪アイム・ソー・エキサイテッド byポインターシスターズの口パク。





2014/3/1 【 エヴァの告白 】
エヴァの告白」を観た。
舞台は1921年のニューヨークで祖国ポーランドから入国しようとする姉妹に待ち受けるアメリカの幻想と現実を描く。冒頭に登場するアメリカのシンボルで「自由の女神」とその後の展開のギャップが切ない。
監督が「エヴァ」を演じた主人公マリオンコティヤールのために書いた脚本とのこと。美しいがゆえの不幸のスパイラルという意味でも「世界の最も美しい顔No.1」に選ばれた女優だから説得力もあり、身を落としながらも崇高な女性像にはぴったり。
それ以上に印象的だったのが、エヴァを陥れる悪人のホアキン・フェニックスで、この人は「ザ・マスター」でもくせ者ぶりがパンパなかったけどダメ男というか一筋縄でいかない役をやらせたら本当に上手い。
原題は「THE IMMIGRANT」(移民)で、当時もそして今もこれに翻弄されている悲劇はつきなく、ラストで一筋の希望がみえたとしてもこの先も不法入国者として一生裏社会で生きていかざるおえないことを思うとやりきれない。




2013/5/4 【 L.A.ギャングストーリー 】
L.A. ギャング ストーリー」を観た。
1940年代のロサンゼルスに暗躍したギャング、ミッキー・コーエンvsロサンゼルス市警の警官たちの極秘部隊(ギャンスター・スクワッド)を描く。原題はそのものずばりGANGSTER SQUAD。
警察や政治家をも意のままに操るほどの力を持つコーエンに対抗するために、警察のバッチを外しまるで‘警察がギャング化’…これが実話ベースとはなんともすっごい話。
アメリカのギャングといえばなんと言っても有名なのがシカゴのアル・カポネで、サンフランシスコでアルカトラズに行った時にもついアル・カポネばかりに関心が行っていたけれど、歴代の有名囚人のパネルにこのミッキー・コーエンもあったらしい。アルカトラズ行く前にこの映画観ていたらなぁと思わずにいられない。
映画では非情の限りの人物像が映し出される。敵や失敗した部下を殺すにしてもやり方の残虐さが異常とも言えて、15-R納得のエグ過ぎシーンは正視に耐えられない。ショーン・ペンはこの極悪非道なカリスマを怪演している。
リーダー的な熱血警官オマラ(ジョシュ・ブローリン)と優男系のジェリー(ライアン・ゴズリング)を中心に正義感ある異端児の面々がそれぞれのスキムを活かして対抗していくのは爽快。
ただ…ジェリーが怖い者知らずにも敵の女性と知ってて恋仲になるっていうのは使い回されたありがちな展開だけに残念。
ラストのオマラとコーエンのガチの血みどろのタイマン勝負は、ド派手な銃撃戦やら爆破シーンの後だけにちょっと予想外。
全体的に113分とコンパクトにまとめたのは良かったし、エンドロールのノスタルジックなL.A.を描いたイラストもレトロ感いっぱいでかなり楽しめた。





2012/12/19 【 アルゴ 】
アルゴ」を観た。
1979年のイラン革命が激化する中、アメリカ大使館が襲撃され52人が人質になった事件の裏で、CIAによる脱出した6人の外交官の秘密の救出作戦を描く。
なななんと事件から18年経ってクリントン政権下でやっと機密指定が解除されたという。
タイトルにもある「アルゴ」とは偽のSF映画であり、6人をその映画スタッフに偽装させ救出させるという奇想天外なもの。これが実話ってすっごい。
CIAの工作員主人公トニー・メンデスは「最後の猿の惑星」を観ていてこの作戦をひらめいたということで、まぁこの突飛とも思える案を採用してハリウッドを巻き込んで実際に作戦が行われたというから、やっぱアメリカはスケールがハンパない。
結果はわかっていてもギリギリまで登場人物を追い詰める演出はスリリングでドキドキしっぱなし。
監督でもあるベン・アフレックは、自身でプレッシャーに耐えつつ任務をこなす寡黙な主人公を見事に演じている。ベン・アフレックのこれまでのイメージが払拭され、こんなに才能あったんだと再認識させられるような作品。
エンドロールに、当時のアメリカ大統領であるジミー・カーター氏のコメントが流れるのも感慨深い。




2012/11/14 【 おおかみこどもの雨と雪 】
おおかみこどもの雨と雪」を観た。
サマーウォーズ」の細田守監督が、またしても完成度の高い作品を作ってくれた。
ファンタジックな要素は父親が“おおかみおとこ”子供が“おおかみこども”の部分だけ。
地域とのかかわりやらを含めた子育て奮闘が現実的で、まるでシングルマザーバージョンの「北の国から」。母「花」が都会を離れ山深い田舎の荒れた家や土地に手を加え「雪」と「雨」という2人の子供を育てていく。失敗を繰り返しながらも周囲の人々に解けこみ子供を育てる母の姿は本当にたくましく子供の育児を通し母自身の成長も描ききる。
今年は「灼熱の魂」「少年は静かに弓を射る」といった母像を描いた衝撃作に恵まれたが本作の母もゆるぎなく真っ直ぐ愛情を注ぐ。並々ならない苦労をして子育てしているのに子供が旅立つ時に花が言った「私、まだあなたに何もしてあげれていない」には胸が熱くなり、思わず「もう十分やったよ。ご苦労さま」と声をかけたくなったのは私だけじゃないと思う。
子供の自立は親離れと表裏一体でその喜びと寂しさを見事に描ききっていた。




2012/10/1 【 愛と誠 】
愛と誠」をアメリカに行く機内にて鑑賞。
最初「ロック・オブ・エイジズ」を観てそのノリの良さにリピートしようかと思ったのだけれど気まぐれで観たこっちの「愛と誠」にめっちゃはまってこっちをリピート。帰りの便でもまた観ちゃうってくらいすっかりツボ。
三池監督作品の中でダントツの1位。歴代の「愛と誠」シリーズでもダントツ。
妻夫木聡の太賀誠度も合格点どころか完璧、武井咲の早乙女愛役も天然おとぼけキャラ全開。脇役の斉藤工の石清水も安藤サクラのガムコも 幼少期の誠役の加藤清史郎もまぁとにかくイメージ通りでキャスティングは申し分なし。
ロック・オブ・エイジズ」が80年代ロックミュージカルだとしたらこちらは昭和歌謡ミュージカル!って言っても昭和歌謡コメディーミュージカル。
西城秀樹の「激しい恋」、にしきのあきらの「空に太陽があるかぎり」、北山修と加藤和彦の「あの素晴しい愛をもう一度」、藤圭子「夢は夜ひらく」、河島英五の「酒と泪と男と女」尾崎紀世彦の「また逢う日まで」etcフルコーラスで歌わされるキャストを観ているとそれだけで笑いがこみ上げてきちゃう。
好き嫌いがかなりわかれているようだけれどここまで遊び心に満ちた大胆な演出には拍手!




2012/7/21 【 おとなのけんか 】
おとなのけんか」を観た。
ロマン・ポランスキー監督が怪我をさせた親と怪我をさせられた親のけんかを、上映時間79分というコンパクトな時間内に濃密に描く。
登場人物はほぼ2組の親ってか4人のみだし、密室だし、まるで舞台向きと思ったら、原作が舞台とのことで納得。
怪我をしたサイドは夫が人の良さそうな金物屋さん(ジョン・C・ライリー)妻が知識人(ジョディ・フォスター)、怪我させたサイドは夫が弁護士(クリストフ・ワルツ)妻が投資ブローカー(ケイト・ウィンスレット)。
庶民派Vおハイソの構図も面白く、子供の怪我からスタートしていつの間にか両家の争いどころ、夫婦喧嘩、そのうち携帯の件で弁護士がへなへなすると残りの3人があざ笑ったりとetc 2対2 どころか もはや敵味方関係なく、初心なんてすっとんだバトルになっていくのが面白い。
原題の「CARNAGE(殺戮)」より邦題が‘ズバリ’直球で上手い。まさに子どもそっちのけの大人ならではの大人の喧嘩でした。




2012/4/20 【 永遠の僕たち 】
永遠の僕たち」を観た。死に取りつかれた少年と、余命いくばくもない少女と、その友人?の既に死んだ特攻隊の日本兵、そんなそれぞれ形は違っても「死」で不思議な繋がりをもった3人が描かれる。少年が唯一心を許している幽霊役を加瀬亮が好演。
他人の葬儀巡りを繰り返す少年のどこに少女が魅かれていったのか全くわからないし、全体的に淡々としていて悪い意味でふわふわした浮遊感がどうにも退屈。
少女を演じたスリムでベリーショートのミア・ワシコウスカのキュートな透明感だけが印象に残った。





2012/4/11 【 アーティスト 】
アーティスト」を観た。
1920年代のハリウッドを舞台にしたフランス映画。第84回アカデミー賞にて作品賞、主演男優賞etc最多5部門受賞。
D映像が話題の中で、当時のままにサイレントの手法をとっていて画面もモノクロなのが大きな特徴。映画がサイレント(無声)からトーキー(発声)へと移行していくまさにその時代を描いているとしても、トーキー時代になってもこの映画はずっとサイレントのまま。今の時代だからこそサイレントからトーキーへの変化を臨場感をもって映画いて欲しかった。まぁそこらへんの変化をまだかまだかと期待した分すかされて少し中だるみした感。
ラストの軽快なタップダンスはそれまでの不満を一蹴するくらい楽しかったけど・・・。主人公のパートナーのアギーに関しては“犬”版アカデミー賞受賞し世界中から引っ張りだこというその人気も納得!特に印象的なのが「BANG!」のテロップと名犬アギーの死んだふり・・・。古典だけれどツボでした。




2012/2/18 【 ALWAYS 三丁目の夕日'64 】
ALWAYS 三丁目の夕日'64」を観た。
今回は昭和39年の高度経済成長に突き進む日本の姿がここにある。東京オリンピック・みゆき族・新幹線開業・カラーテレビの台頭・東洋の魔女の人気etc・・・うまくエピソードに絡め、やっと物質的な豊かさと心の豊かさを矜持できるようになったこの時代の人々の密な繋がりりを笑いと涙で描いている。それにしても「アタック!」シーンは秀悦で爆笑。
時代再現のクォリティは言うまでもなく安心してどっぷりノスタルジーに浸れる。もちろんベタと言ってしまえば確かにベタベタ・・・でもこの懐かしい情景は心の中に確かにあるもので琴線に触れまくり。
今回の軸は六ちゃんの結婚と淳之介の巣立ちということになるのだけれど、それにしてもこのシリーズを通して見る淳之介役の須賀健太に対しては成長を見守る親戚のような気分にさせてくる。
夕日町三丁目のお馴染みの住民たちにまた会いた〜い。




2010/9/22 【 悪人 】

芥川賞作家・吉田修一の同名長編小説を映画化した「悪人」を観た。
サブタイトルの「誰が本当の“悪人”なのか?」の通り、祐一(妻夫木聡)は本当は悪人じゃないでしょってスタンスで「罪を犯したものだけが悪人なのか?」と問いかける。
子供を捨てた母・老人を騙す悪徳商法・人を陥れようとする外交員・死者をあざける大学生・おもしろおかしく報道するマスコミの悪は? 加えて援助交際、暴行、犯人隠避etcの悪は?・・・市井の人々誰にでも‘悪’という面がありほんのわずかなボタンのかけ違いで‘悪人’と呼ばれるようになってしまう。
主役の2人以上に印象に残ったのはわきを固める加害者の祖母(樹木希林)の絶望の極限状態と被害者の父(柄本明)の悲しさ憤りの渾身の演技。
このベテラン俳優陣に並んで上手いと思ったのが被害者が思いを寄せる大学生(岡田将生)の他人の不幸を鼻で笑う性根の腐りきった若者像。被害者となったOL(満島ひかり)に関しては、いかにも同性から嫌われるタイプの計算高い性悪女というのは伝わるけれど、ある程度何やっても許されちゃうかもという程、満島ひかりchanは可愛い過ぎるのよね。それにチャラ大学生グループにあざけ笑われたコビコビのメールの中身も意外とフツウなような・・・(-_-;)

それにしても祐一(妻夫木聡)と光代(深津絵里)に共通する、どこにも行きようのない場所での生活の閉塞感と孤独感はよく描かれていた。鬱屈を抱えた中「本気で誰かに出会いたかった」と言って出会い系サイトに本当を求めたという現実が痛々しい。
映画の主演2人が表紙となった原作は上下ともに帯裏面に原作者と監督の対談が収録されていて、「人間は大切な人のためなら立ち上がれる」がテーマとのこと。これはラストの自分のやり方で大切なものを守ろうとした祐一の姿に繋がり、ここで再度悪人なのかと問いかけてくる。
 





2010/7/7 【 息もできない 】
息もできない」を観た。
まさに衝撃の一作。見ているだけで相手をビビらせるすごみがハンパなく冷徹で粗暴な主人公サンフンを演じたヤン・イクチュンに打ちのめされた。なななんと主演ばかりか監督・脚本・製作・編集をこなしたというからこの人の才能に驚きを隠せない。
やはり家族愛とは遠い同じニオイを持った女子高生ヨニとの出会いを通じたサンフンの心の軌跡を描く。韓国語はわからないながら「シバラマ」(クソ野郎)という言葉を覚えてしまったほど主人公が数え切れない程口にする。
口汚く相手を罵る台詞があふれる中、容赦ない暴力・悲惨な生い立ち・乾ききった心・閉塞感etc奈落の底まで突き落とされるようなシーンが続く。だからこそボロボロな2人の切ない一体感があふれる漢江の河辺のシーンと一見フツウのことを手にすることがどんなに困難なのかを思い知らされるラストの何気ない食事シーンが秀悦。
暴力の連鎖を前面にその裏に家族と韓国の社会的背景の闇もきっちりとらえたなんとも重みのある映画だった。




2010/5/22 【 オーケストラ! 】
仙台「チネ・ラビータ」にて「オーケストラ!」を鑑賞。
パリでは「マイケルジャクソンTHIS IS IT」をおさえオープニングNo.1を記録したという。
もうかつての面影もないボリショイオーケストラの面々が偽って乗り込んだパリでのコンサートの行方は?この作品がフランス映画だということを忘れるほど、いかにものロシア的なドタバタが描かれる。
リハーサルそっちのけの勝手気ままぶりもかなりなもんだけれど一番ツボだったのがパスポートの件。このいいかげんさが大陸的だよね〜。
それでいてユダヤ人迫害の史実なども踏まえシリアスな要素もきちんと描いている。そういえばクラシックの名曲をしっかり入れながら、陽気なジプシー音楽もしっかり楽しませてくれるのもこの手法に通じるのかも。こーいう意外性が効いているせいか随所にメリハリができて笑いあり感動ありの作品になっている。
ラスト12分間のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はさすがに圧巻。ひとクセもふたクセもあるおじさんの中で、透明感のある美しいヒロインを演じたメラニー・ロランもはまり役だった。




2010/3/13 【 アリス・イン・ワンダーランド 】
公開がカナダでも春休み中ということもあり平日でもsold outという中、なんとか観れたのが「アリス・イン・ワンダーランド」。
ルイス・キャロルのアリスを独特の毒気のある世界観を描くティム・バートン監督が手掛けるとなるとそれだけで不思議世界にワクワク。
が、ある程度なじみのある話とはいえ、イギリスアクセントとキャラを際立たせた独特の英語が全然わからない(;_;) こここんな難解なものとは・・・。
しかもラストにはロボット的なドラゴン登場に口ぽか〜ん、ファンタジーっていうよりSFチックな戦いになっちゃってるしぃ。子供の頃から焼きついているアリスの世界観とどーも違う。
かと言ってイマジネーションあふれる映像だけでも楽しめたかというと・・・3D映像に関しては満喫できた「アバター」と比べ、こちらは3Dにしている意味さえないような。
インパクトある豪華出演者達にもかかわらず楽しむレベルではなく30分くらい寝てしまいました。




2010/1/1 【 アバター 】

今年お初映画は「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督が12年ぶりに発表した、最新3D映像による「アバター」。
バンクーバー観光のガイドブックには‘年中無休’ とあったので雨の中taxiを飛ばして行った観光地が11日にきっちり定休日となっていたので(-_-;)、気を取り直して向かったのが映画館。
さすが超話題作だけあって満席。字幕無し映画に不安はあったもののストーリーがわかりやすいのと異世界の言語にはちゃんと英語字幕がつくおかげで問題なく鑑賞。
現代人VS異星人 という構図で今回は異星人が今回のブルーのクリーチャーであるナビィ族。これまでは相手が宇宙人であったりロボットであったり動物であったり古代人であったり まぁ相手はその度に変えながらこれまでもう何度も観てきたプロットの域に収まっていた。しかも主人公が敵サイドのムスメさんと恋に落ちるあたりもお約束。というかあまりにベタなストーリーは特筆することもなし。
ただ3D映画としての映像は断トツに楽しめた。
D映画が続々誕生している中でもhighレベルで3Dの可能性を決定的なものとした象徴的作品と呼べるかも。ナビィ族の造形も息をのむほど美しい世界観もお見事。ということで3Dで観たからこそ意味があったとも言えるかも。
終了とともに大拍手 という海外ならではの観客の反応も垣間見れた。





2009/10/17 【 女の子ものがたり 】
女の子ものがたり」を観た。
西原作品ではお馴染みの貧困と逃げ場のない閉塞感を背景に、この映画ではたまたま移り住んだ町ってことになるけれど、「生まれた土地は選べない。なんでこんな町に生まれちゃったんだろう」「運命を変えるにはこの町を出るしかない」・・・みたいな発想がベースの 原作者の自叙伝的なストーリー。
「貧乏」をユーモアで包み生きるたくましさとして描く西原漫画の世界を映像で描くには限界があるのかもしれない。そして今回はその「貧乏くささ」さえもきちんと描かれていない。前作の「いけちゃんとぼく」では主人公の友達の‘うどん屋の子供’の描き方が完璧だっただけに残念。
主人公なつみを黄・みさちゃんを水色・きいちゃんをピンクにキャラを色分けしていたのが、なんともファッショナブルでおされ〜にさえ見えるし、いじめられっ子の2人は「顔が変だの汚いだの」からはかけ離れていた。
成長した高校時代から結婚後に至っては思慮が浅く愚かな道を歩んでいくけれど、モデル並みに美人でスタイル良くイケテルお姉ちゃん達なのでリアリティが全くない。
同じことがきいちゃんの母親役の風吹ジュンにも言えてあの無駄なきちんと感には首をかしげてしまった。
脇役だけじゃなく、主人公なつみに関しては子供時代も高校時代も素朴な外観で華やかさがないのが逆にリアリティがあったとしても、将来的にどこがどうなれば深津絵里につながるのかとっても疑問。
なつみが描いた「女の子の前にいくつもの道があってその道はちゃんと前に延びている」絵だけは素敵。





2009/10/14 【 ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜 】
ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」を観た。
太宰治生誕100周年記念作として作られ、第33回モントリオール国際映画祭にて監督賞を受賞。
タイトルの「ヴィヨン」は高い見識がありながら放蕩な人生を送ったフランスの詩人フランソワ・ヴィヨンに由来しているということで、太宰が自らをモデルにしたと思われる小説家の大谷は、まさに破滅願望が強く自分勝手な放蕩者なんだけど、なんともはかなくて口から出る言葉は知性があって品がある。
「女には幸福も不幸もないものです」「男には不幸だけがあるのです」「生きるのは怖い、死ぬのも怖い」「佐知はだる〜くなるほど素直です」「生まれたときから死ぬことばかり考えて」「やっぱりコキュに成り下がった」のコキュ(cocu)はフランス語で妻を寝取られた夫のことだというからついその文学的な台詞の数々には思わず聞き入ってしまう。
絶望的な中でも妻が全てを受け入れ続ける理由は、純粋にただ一人自分を理解してくれた2人の出会いにあるのかも。小料理屋から金を盗んで逃げたと聞いて高笑いするシーンにめげない妻像が凝縮されていたように思う。さりげないラストシーンにホっとさせられた。
副題の「桜桃とタンポポ」は大谷の作品の「タンポポの花一輪の誠実を僕は信じたい」に由来しているのかと思いきや、主人公の大谷(浅野忠信)と佐知(松たか子)を例えたということ。
痛みやすいけど甘みがあって愛される‘桜桃’が大谷、どんな環境にも対応して成長し華やかではないけれど誠実な美しさを持った‘タンポポ’が佐知ということらしい。
そんな説明文を読まないと伝わらないようなことを敢えて副題にした意味あいに疑問。





2009/10/1 【 ウルトラミラクルラブストーリー 】
ウルトラミラクルラブストーリー」を観た。
映画との相性もあり、イマイチだと思ってしまう作品というのは少なくないものだけれど、これほど不快になった作品は珍しい。
横浜聡子監督は青森出身で同郷の松山ケンイチに出演をオファーしたということ。人気実力俳優松ケンが主役な上、他の主演者も麻生久美子・原田芳雄・渡辺美佐子etcと何気に豪華。
さすがに松ケンの津軽弁は半端なく、地元の子供の台詞もよくわからないので途中まで字幕が欲しいと思ったけれど、もし仮に台詞を理解出来たとしてもこの監督の意図することはわからなかったと思う。
常識を蹴散らした前代未聞の“ウルトラ”に“ミラクル”なラブストーリーということだけれど、何をどう考えたらこの監督が故郷を舞台にこんなブラック過ぎる悪趣味な要素をちりばめたのか理解できるようになるのかわからない。
メジャー・デビュー第1作ということだけれど今後が気掛かりで危ぶまれる。





2009/9/9 【 インスタント沼 】
インスタント沼」を観た。
主人公ハナメは、‘ジリ貧OL’という設定で仕事も恋愛も家族もトラブルに巻き込まれていく。
台詞+ナレーター+独り言・・・ととにかくしゃべりまくるハナメは向こう見ずで思い込み激しく周囲に媚びないというか振り回すキャラが際立っていて、一見好き嫌い別れそうなんだけれど意外とイラッとしなかったのは麻生久美子のキャスティングが正解だったからかも。
胡散臭い骨董屋の風間杜夫・要所に登場する通行人役の温水洋一・三木聡監督作品では常連のふせえりのキャラも面白い。そんな個性的なキャストの中でもぶっとびだったのがモヒカンのパンクロッカー役の加瀬亮で周囲が変過ぎるせいか一番まともなのが妙に可笑しい。
ということで面白い要素はいっぱいなのに活かされていなく後半に失速。「困った時は水道の蛇口をひねるといい」という発想はまぁ良しとしてもインスタント沼の件に至ってもかっぱの件も釘の曲がり具合の感性にしても、ちょっとついていけなかった。「ひらけ、ぬま」と言われても(-_-;)ハナメが毎朝飲む‘シオシオミロ’にしてもミロを10に対して牛乳を1で粉っぽく見るからに不味そうだったのも残念。
ただハナメの衣装は文句なくどれもおっしゃれ〜。





2009/8/26 【 アマルフィ女神の報酬 】
アマルフィ 女神の報酬」を観た。
フジテレビが開局50周年記念映画。allイタリアロケで名所を次々まわり観光気分を味わえる。
ローマは見慣れたものとしてもタイトルにもあるアマルフィの美しい景観はため息もの。
ということで観光地巡りに重点を置いたせいか、それに伴ったご都合主義の展開はつっこみどころ満載。綿密に計画を練ったであろう犯人サイドが、たまたまイタリア旅行中の母子を巻き込んだり、親の心理につけこんだとしても警備会社での母の行動を‘予定調和’として計画性を持たせるには無理がある。
主演の織田裕二のクールな外交官はともかく、天海祐希はサバサバした印象が強いせいか役柄に違和感があったし、‘特別出演’の福山雅治も無理やり華を添えた感のある登場で、豪華キャストの割にちょっと残念。更に華を添えるソプラノ歌手サラ・ブライトマンに関しては、♪Time To Say Good By♪ をじっくり堪能できたので、とてもお値打ち感が高い。ということで、いかにも‘お金かけました’という作品だった。





2009/8/22 【 いけちゃんとぼく 】
いけちゃんとぼく」を観た。
西原理恵子に はまったきっかけになった名作の映画化「ぼくんち」は期待を裏切って超がっかりしたものだけれど・・・果たして本作は・・・。
ルーツの高知にこだわって撮影したということで地方ならではの逃げ場のない人間関係なども描かれる。
キャスティングも良く、特に主人公の友達の‘うどん屋の子供’は、西原漫画ではお馴染みのキャラだけにあまりにイメージのまんまで拍手モノ。「いけちゃん」はCGのかわいらしさより声優の蒼井優の声が印象的で、そういえば「鉄コン筋クリート」のシロの声もぴったりだったなぁ。ということで「ぼくんち」のような失望感はないものの、「絶対泣ける本第1位」という割に・・・全く 全く泣けなかった・・・(-_-;)
やや脱線しますが、「絶対に泣ける本」というのはこの「いけちゃんとぼく」ではなくむしろ「毎日かあさん4」だと思う。加えて「好きな人の子供のころに会う」という本作のテーマは「パーマネント野ばら」に登場するワンシーンとおもむろにリンク。この当時、西原理恵子がプライベートで愛する元夫との死を意識しどんだけ深く想いを馳せていたかを考えるとなんとも切ない。





2009/4/3 【 ウォッチメン 】

アメリカでは36日に公開されるやいなや初登場第1位を飾っており、全世界のボックスオフィスでも1位にランクインしている「ウォッチメン」を観た。
以前「ステルス」を観た時に、なんでもごちゃまぜ映画で「ハロハロムービー」とレビューしましたが、いやぁ今回の「ハロハロ」度はそれをそうとう上回るものでした。史実を絡めながらのヒーロー映画に、SF・サスペンス・スプラッター・アクション・Love・ひねった親子関係・猟奇殺人これに量子力学に相対性理論までなんでもかんでも織り込んでの163分。長いのよ(-_-;) 
2世代に渡るウォッチメン達ということで人間関係が複雑になったのかもしれないけれどせめて登場人物の背景だけでももっとシンプルにできなかったものかしら・・・。
ヒーローものでありながらR15指定ということで相当きわどいシーンもあってターゲットをどこにしているやら・・・冒険してるわねぇ。とにかくスプラッター系シーン苦手なのできつかった。
青人間?Dr.マンハッタンの超人ぶりはともかく覆面顔で孤高の現役ヒーローであるロールシャッハが「ダークナイト」のバットマンの悪役ジョーカーに通じるなんともいえない薄気味悪さが他のメンバーから秀でていたような。
「正義」って何なのか?とんでもない方向から問いかけている映画でした。





2009/4/2 【 イエスマン"YES"は人生のパスワード 】

イエスマン“YES”は人生のパスワード」を観た。
ジム・キャリーならでは笑いは随所に垣間見られ、ここらへんはお約束とはいえ安心。
銀行の融資係で付き合いの悪いネガティブな主人公が、ポジティブになっていくという展開なのだけど、きっかけとなる自己啓発集会がなんか新興宗教みたいで洗脳されていく様子は見ていて気持ち良いものではなかったような。あのテレン・スタンプが教祖というのはまぁ意外性あるけれど・・・。
主人公の周囲の人は離婚をきっかけに心を閉ざしたいきさつを理解できているからこそ優しく主人公を嫌っていないのでしょうけれど、そこら辺の経緯をもっと丁寧に描いていれば何故あれほど良い上司や友人に恵まれているのが納得できたかも。
エンドロールの斜面を腹ばいで滑るシーンが楽しいのでお見逃しなく。





2009/3/8 【 エレジー 】
エレジー」を観た。
30歳の年の差カップルの大人の愛を静かに描く。
インテリで人生も達観している有名な大学教授デヴィットが、理性を超えた恋愛で恋愛の基本の‘き’さえ抑えられなくなっていく・・・。。年齢関係ない証拠ネ。TVで偉そうなことさんざん言っている割にタマの頼みという息子の相談にもたいしたこと言えないし、自由を謳歌しているようでいて恋愛に幼いインテリ教授をベン・キングスレーがとっても上手く演じていた。
30歳も年下で恋愛には優位なハズの彼女も「愛されているのは私がキレイだから。キレイじゃなくなったら・・・」とわかっている。
ここらへんのお互いの気持ちがすっごくにじみ出ていて、この二人のそれぞれの思いにとっても感情移入しちゃった。
脇役の教授の親友で「傷つく前に見切りをつけろ」とアドバイスするデニス・ポッパーもキャリアウーマンでいながら一人じゃ寂しい年代にかかったパトリシア・クラークソンもとっても存在感ある。
とっくに達観しているかのような若い彼女に対して、やっと年上の大学教授が本当に大人として歩み始めるのかということをラストで描いている。
ゴヤの「裸のマハ」にリンクさせた展開は秀悦。全般が文学的で、エンドロールもアメリカ映画じゃなくヨーロッパ映画みたいな余韻があった。
教授役のデヴィット役のベン・キングスレーはなんとなく「LOST」のロックに似ている。加えてデヴィットの息子役が「24」のジャックバウアーに似ているような・・・。こう思ったの私だけ?




2009/2/14 【 英国王 その給仕人に乾杯! 】

TOHOシネマズシャンテで「英国王その給仕人に乾杯!」を観た。
ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞したほか、本国チェコの映画賞を総なめにした話題作。
チェコ映画というと「この素晴らしき世界」という大大大好きな映画があるけれど、本作と共通しているのはチェコスロバキアという国がいかにナチス占領下で翻弄されたかということ。そして作品のテーマ「幸せと不幸は隣り合わせ」ってことも共通している。厳しい時代背景を決して暗く描かずユーモアをちりばめている点も共通。音楽はまさに同じ人が担当。ということでこの作品はかな〜りどんぴしゃに「この素晴らしき世界」と同様にとっても好み!!!
冒頭で「私の幸運はいつも不幸とドンデン返しだった」の言葉通りに、駅のソーセージ売りからスタートして色々な店を渡り歩いていく主人公ヤンの生涯をテンポ良く描く。
タイトルとは別でヤンは英国王の給仕人になることはなく、 ‘英国王の給仕人’だったというのは「ホテル・パリ」で客の注文を一瞬で察知した給仕長。この給仕長を始めとして登場人物がみ〜んな存在感があってとっても素晴らしいスパイスになっている。
小男ヤンのちょこまかした動きや軽やかな音楽もなんとなくチャップリン映画を彷彿しているよう。加えて素晴らしいお料理や魅力的な女性達との出会いが華を添えている。
ヤンに過大な影響を与えた行商人ヴェルデン氏が要所要所で登場するのだけれどラストシーンがもう最高!あくまで前向きなヤンの人生に乾杯!!!





2008/10/25 【 イーグル・アイ 】
イーグル・アイ」を観た。
監督がスピルバーグじゃないのに、やたら「スピルバーグ」の名前が推されているのは、もともと12年前にスピルバーグが思いついたものが原案だかららしい。主演はこれまたスピルバーグの映画(トランスフォーマー・インディ・ジョーンズ4)で馴染みのシャイアー・ラブーフとは・・・。だったら監督やれば良いのに・・・。
たった3日間の出来事を目まぐるしく場所を移動させながらスリリングに描く。計算しつくされたカーチェイスが一番の見どころかも。カークラッシュや爆発は驚いたことにCGを使わず本物を使っているとかで見応えある映像。でもでも正直言ってスピード感ありすぎてもうどれがどれやら・・・。観ている側には優しくない(-_-;)
謎の声の正体から何気に描くのは「アメリカの傲慢」だったりするのは12年前ならまだしも、ここんとこそれ系が多いからなんとなく新鮮さがない。それにラストあれはないでしょう。盛り込み過ぎなのよね。こーいう映画に恋愛要素は不要。




2008/10/24 【 イースタン・プロミス 】
イースタン・プロミス」を観た。
久し振りにエンドロールが終わって場内が明るくなっても直ぐには席を立てない重圧感のある映画を見た。
タイトルの「イースタン・プロミス」とは、「英国における東欧組織による人身売買契約のことを指す」とのこと。
ロンドンの闇で移民としてやってきたロシア人の哀しさが溢れている。このフィルム・ノワールの雰囲気にぴったりなのがアカデミー賞で主演男優賞ノミネートのヴィゴ・モーテセン(ロード・オブ・ザ・リングのアラゴルン役)演じるニコライ。クローネンバーグ監督とのコンビでは前作の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」とリンクするような何やら秘密めいた男を演じている。ビシッと着こなしたスーツ姿・かすれたロシア訛り英語・coolで冷静沈着な行動・感情を抑えたストイックな表情・チラリとのぞかせる優しさetc・・・この魅力に完全にノックアウトされた。
このニコライの味がボスの息子(ヴァンサン・カッセル)のコンプレックスの裏返しのような傲慢さと頼りなさが対比となって描かれる。
マフィア映画というと何といっても思い浮かぶのが大好きな「ゴット・ファーザー」。マフィアのボスの家族愛とか手下への容赦ない無慈悲とかは共通しているのものなのね。どーいう過程であの一見温厚な料理店の店主がマフィアのボスとなり得たのかを この映画もそこまでひっくるめた続編があるなら、ロシア版「ゴット・ファーザー」とした大作にもなり得るのかも。まだまだこの映画で描ききれなかった歴史を知りたくなった。
話題になっているサウナでの素裸vsナイフの格闘シーンも迫力いっぱいで痺れる〜。そーいえば銃じゃなくナイフを使っているのも生々しさを高めているのかも。
生まれたての‘ぬるぬるの赤ちゃん’映像も含めてこの映画は血にむせかえるような直視に耐えがたいシーンが多いので、18R指定とクローネンバーグ監督色満載というこを覚悟して是非ご覧下さい。




2008/10/17 【 歩いても歩いても 】

歩いても歩いても」を観た。懐かしい夏の匂い満載のシーンも秀悦。
長男の命日に実家に集まったある夏の日を描く。
「実家で過ごすお盆」を思い浮かべればこの映画がいかに身近なものかを実感。迎える祖父母・親と気詰まりな息子・気を使う嫁etc あまりにも等身大。
これがちゃんとした台詞なのかと疑う程ありふれた会話。そうそうこんな風にビミョウに気を遣って料理して準備して・・・人が集まる準備ってのはこ〜なのよね。それぞれの言葉の裏の本音を隠しながら体裁を整える人々にうなずく。
意外にもいしだあゆみが歌った♪ブルーライト・ヨコハマ♪がこの映画の鍵となり、この歌詞が映画のタイトルがとリンクしているとは気が付かなかった。♪歩いても〜歩いても〜♪歌詞のここから取ったのかと改めて知った。深いなぁ。
ニコニコしながら本音をぶっちゃける母親の役の樹木希林の人間臭さが上手い。体裁の裏のきつい本音にショックを受けつつもこんなもんだろうなと納得する自分がいた。
「人生は、いつもちょっとだけ間にあわない。」というキャッチコピーがあまりにもピッタリ。‘お墓参り’を象徴的に引き継がれていく家族というものを描いている。





2008/9/14 【 おくりびと 】
モントリオール映画祭でグランプリ受賞で何かと話題になっている「おくりびと」を観た。

本木雅弘,山崎努両人の仕事ぶりには心を動かされる。是非この人達にお世話になりたいゎと思わずにいられない。笹野高史もすばらしい存在感で「死は門」の台詞はかみしめるほどに良い。笑いあり涙あり・・・。
でもでも、職業に貴賤はない とここで正論をぶつつもりはないけれど それほどこの「納棺師」という職業はこの映画で描かれているような忌み嫌われるモノなのかに かな〜り疑問。
映画館に貼り出していた著名人の感想にも「このような職業があることを初めて知りました」というものが少なくなく、私自身も葬儀社の仕事のひとつとして捉えていたので、独立してこのような職業があることを知らなかったくらい。
葬儀の時って、複数の関係者が出入りするので、一般人には分かり難いのがフツウだと思う。
でもこの映画では
「納棺師」の認知度に私との温度差がかなりあって、意図的としか思えない「もっとまともな仕事をしろ」「将来あんな仕事に就くしかない」「汚らわしい」etcと思い切り見下した台詞には、その度に引いてしまった(-_-;)





2008/9/2 【 アフタースクール 】
アフタースクール」を観た。
予告編によると人の良い教師(大泉洋)・裏社会に生きる怪しい探偵(佐々木蔵之介)・爽やか笑顔の会社員(堺雅人)の3人が本当にイイ奴・悪い奴・ヒドイ奴なのかどうかがポイントらしく、先入観をくつがえすストーリー展開を楽しみにしていた。
この3人のキャスティングも良く、ちょっとでも気になったシーンがあったらそれを流さず片隅に留めておくと、後からつながってくるのが面白い。が、所謂「騙される映画」として評判も良く期待が高すぎたせいか 意外にも「えっそーいうことか」 と事実を知った時の驚きや爽快感があまりなかった(-_-;)
ヤクザが絡む社長の不正の内容がピンボケで話の全体がイマイチ見えずらいのも残念。
裏社会をみて何でも知ったつもりで自分だけ学校を卒業した気になっている探偵の「中学校の先生なんかに何がわかる 早く卒業しろ」という台詞に対する「学校なんてどーでも良いんだよ。つまんなくしているのは自分自身だ」というラスト近くの教師の台詞が印象的。
構成が良いだけになんだかなんとももったいない感が残った。




2008/6/24 【 インディー・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国 】
「最後の聖戦」から19年後の「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を鑑賞。
主人公のハリソン・フォードは64歳だとか。インディ・ジョーンズここに参上!という感じで、よくまぁ相変わらずの身のこなしでアクション場面も年齢を感じさせない。
前作から19年にわたって練られた最新作ということだったが、いくつか不満が残った。まず、核実験のシーン。きのこ雲をまじまじと眺めているのアリ?でしょうか?やはりここはきのこ雲シーンとインディは時間差を持つべきでは・・・?
まぁその後のシーンの後は快調で楽しめた ながら・・・この映画の最大の不満にもなっているのが後半。
監督のスピルバーグ・製作総指揮のルーカス・主演のフォードの3人全員の意見の一致を重要視したという脚本だけれど、「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」「ミスト」のフランク・ダラボンが1年がかりで書き上げた脚本にスピルバーグとフォードが大乗り気ながらルーカスがダメ出ししボツになったというワリにこれですか?
ルーカスさえいなければ・・・と思わずにいられない(-_-;) 
なんでSF???ダラボン脚本版を観たかったぁ。冒険アドベンチャーはSFとは違うでしょ。台無し。ラストでこけるとはこのこと。あ〜あ〜。




2008/6/13 【 俺たちフィギュアスケーター 】
俺たちフィギュアスケーター」を観た。
レンタルで鑑賞した「主人公は僕だった」のウィル・フェレルと「バス男」のジョン・ヘダーの2人によるフィギュアペア。
この映画のために数ヶ月にわたる厳しい特訓をしたというだけに笑えるだけじゃなく、実際どっこまで演じてたのかかわからないながらも芸人魂に感嘆する。特にウィル・フェレルはあの年齢であの体型でどれだけ頑張ったのだろう。
それにしてもアイスダンスのような突き抜けたショー要素たっぷりで、フィギュアってこーいうのアリ?という既成概念を見事に覆してくれた。
設定自体面白いけれど、それに輪を掛けてそれぞれのフツウじゃない衣装も技もよくここまで考えられたものだ。キャッチコピーの「氷が溶けるほど暑苦しい男同士のスケーティング」は本当だった。
音楽もCG効果による迫力ある演技も楽しめるが、コメディでありながら下ネタ満載のためファミリー向きではないので要注意。




2008/5/1 【 うた魂♪ 】

うた魂♪」を観た。
‘合唱’をテーマに、歌声とルックスに自信満々で「歌っている私が好き」というナルシストで目立ちたがりの女子高生(夏帆)の成長を描いている。随分イヤな女子高生かと思いきやあまりに天然なのでなんか笑っちゃう。
思い上がったヒロインがぺちゃんこに凹みそこから立ち上がっていくという展開はありがちながら、この映画を何倍も魅力的にしているのは何と言っても脇役ゴリの存在。ヒロインにカツを入れ影響を与える1972年生まれ実年齢35歳が演じる17歳のサバ読みオッサン高校生の存在感は最高のスパイス。「真剣十代」と称して熱く語る姿は、オッサン高校生だからこその圧倒的パワーと説得力。ゴリ凄い!!不良高校生の見た目と何故かちゃんと筋の入った会話のギャップなどコミカルさをちりばめながら、♪尾崎豊♪の曲で見せ場を作っている。
この映画を観て思い出したのが、ムスメ達の学校での合唱コンクール。まだ恥じらいの1年生から完成度の高い3年生までそれぞれに拍手だった。何かに真剣になっている姿は感動を与えてくれるものだ。
この映画のために書き下ろしたというのがゴスペラーズの♪青い鳥♪。サービス出演なのか?ゴスペラーズはコンクール審査員として出演している。





2008/4/20 【 王妃の紋章 】

王妃の紋章」を観た。
チャン・イーモウ監督作では「HERO」「LOVERS」系のハデハデな大作。
この映画の王宮は「始皇帝暗殺」撮影に建てられたものに手を入れて使ったそうだ。中国で制作費50億かけて史上最も華やかな唐王朝を描き出した。18金づくしの金の円柱600本・金箔・金糸ect、豪華な衣装3000枚、1キロもの絹の絨毯、12000平方メートルの宮殿エリアを埋め尽くす300万本の菊の花・・・目がチカチカするくらいピカピカでキラキラで豪華。これがCGかと思っていたらぬぬぬあんと実写だそうで驚いた。お金遣いが荒すぎるってば(-_-;)
菊の節句である重陽の節句(9月9日)の血まみれの宮殿の広場を、何事もなかったように片付けてまた菊の花が敷き詰められていく光景が昨今の中国とリンクするようで印象的。
大スケールで敵対する王と王妃に子供達が絡む究極のドロドロ家族。こんな家族に命を捧げる兵士達があまりにもお気の毒。





2008/3/9 【 明日への遺言 】

明日への遺言」を観た。
第二次世界大戦後、戦犯裁判でアメリカを相手に無差別爆撃をは戦犯行為に当たるのか否かで法廷闘争をした司令官岡田資を描いている。
岡田資のフェザーストン弁護士が米国人であるにもかかわらず敗戦国の元軍人の為に一生懸命弁護する姿は目からウロコ。アメリカ人の徹底したフェアプレーに脱帽。
この作品は法廷シーンがほとんどで、裁判が進むにつれ岡田資という人物の毅然とした態度と健全さに、検察官や裁判官も含めて観客も人物像に胸を打たれていく。品格は人を動かすのを実感。
どうしても藤田まこと=「はぐれ刑事」のイメージ。そちらに関わってきたカメラマンが今回も支えたというし全体的な印象も実直な人柄の良さという意味でもリンクしている。
私は泣かなかったけれど「本望である」と言い13階段へ歩いていく後姿に涙する人も多かった。
藤田まことの存在感の陰で富司純子・西村雅彦・蒼井優・田中好子といった脇役は印象が薄い。
気になったのは竹之内豊のナレーションに力が入りすぎていたこと。





2008/2/28 【 いつか眠りにつく前に 】
いつか眠りにつく前に」を観た。原題は「Evening」。
邦題のいつか眠りにつく前にの‘眠り’とはまさに‘死’。
若い頃の夢にやぶれ、結婚にやぶれ、生活に追われながらもなんとか子供も自立しそして年老いて死の床で混濁した意識の中、人の心には何がよぎるのか?理想とは違ってしまった自分の人生をどう捉えるのか?とても深い映画だった。思うようにはならないのが人生・・・果たせなかった夢・罪の意識・後悔etcそれでもその人生は失敗ではないというメッセージが静かにじわりじわりと伝わってくる。
老婦人のヴァネッサ・レッドグレーヴとメリル・ストリープがそれぞれの実の娘と共演を果たしているのも話題になっている。ベッドで顔を見合わせて会話を交わすシーンは圧巻。さすが大女優。
ファーストシーンとラストシーンの海辺のシーンは、強烈な憧憬がどう闇に包まれていくのか・・・そして・・・どう新たな輝く朝をむかえるのか・・・と、人生を象徴した素晴らしいものだった。




2008/2/19 【 エリザベス:ゴールデン・エイジ 】
エリザベス:ゴールデン・エイジ」を観た。
ケイト・ブランシェットがオスカー候補になった「エリザベス」を再び演じた続編。ヴァージン・クィーンとして生きるエリザベスがスペインの無敵艦隊を破り黄金期を描くまでを描いている。
眉を剃り、髪を短くし、白塗りの姿はまるで冒頭の肖像画そのもの。華やかな宮廷生活やゴージャスな衣装も見応えあり、女王の知己ある受け答えや堂々とした姿には感心するばかり。
はりめぐらされる政略や崖っぷちの戦いと恐怖、そして女性としての葛藤・・・そんな中でも勇ましくふるまうケイト・ブランシェットは前作と本作でエリザベス1世の魂が降霊したかのような存在感を見せている。
世界最強のスペインとの闘いに天(天気)も味方したというも黄金時代=ゴールデン・エイジを築く女王のエピソードとして興味深い。




2008/2/9 【 アメリカン・ギャングスター 】

アメリカン・ギャングスター」を観た。
1970年代に実在した悪党ながら生真面目な麻薬王を善の役柄のイメージに強いD・ワシントンがそのイメージのままで、彼を追い詰める刑事を善の匂いのしない風貌で仕事だけは真面目というラッセル・クロウが演じている。
大金を発見した時もねこばばしなかったという武勇伝が何度も出てくるあたりにこの当時の腐りきったご時勢が現れている。他国ながらも救いようがない警察のご事情には呆れるばかり。
ラッセル・クロウの中途半端なロン毛のオバちゃんヘアにビール腹という風貌がキャラをよ〜く出している。役作りの為のこの身体だとしたらお見事。ある意味こーいうのをださかっこいいと言うのかも。
麻薬王vs愚直な刑事軍団プラス悪徳刑事という構図はこれが実話というだけにやりきれない。「勝って敵をつくるか、負けて友をつくるか。」をはじめ渋い台詞が印象的。
異端児同士の2人が向き合った時、今まで誰にも味わったことがない相手への畏敬と人間性の根底に通じ合うものを見つけたハズ。立場が立場なら親友にもなれたであろう無骨な男同士のドラマだった。





2007/12/16 【 アイ・アム・レジェンド 】

ウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」を観た。「今年度を締めくくるにふさわしい、この冬一番の超大作」というふれこみと、面白そうな予告編につられて観たものの・・・大層な予告編ほど本編にがっかりというパターン。誇大宣伝に騙されたかも(-_-;) 
まるでバイオハザードの柳の下のどじょう。新鮮味が全く無し。
オープニングの廃墟と化したニューヨークの映像はかなり見応えあった。が、圧倒的な敵の数の割に無理のある展開・あまりにも都合良い女性の登場と神のお告げのような台詞などストーリーにつっこみどころあり過ぎ。主人公が宙吊りにされるシーンは、実は恋人を連れ去られたことと同じ手法で仕返しされているという背景があるそうだが何の説明もないまま描かれている。
意外にも謎の敵がホラーもどきでドキドキする内容だが、バイオハザードファンには平気かもしれない。





2007/11/13 【 ALWAYS 続・三丁目の夕日 

2005年公開された「ALWAYS 三丁目の夕日」から2年、「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を観た。
東京オリンピック開催が決定し羽田空港・東京駅・特急列車こだまetcと高度成長期の昭和34年が舞台。
前作はこれでもかというくらい涙腺を刺激しまくったものだが、さて今回は・・・?。
親戚の子供を預かる・戦友・同窓会・のら犬・給食・映画全盛時代・元恋人との再会・霜焼けetcと多くのエピソードを描きながらも何故かどれもこれも感動が中途半端。心にジンとくるのは軒並みところどころに織り込まれる前作の感動シーンというのもなんだかなぁ。
特に親戚の子供や許婚との再会はあまり必要性を感じなかったのでそこを削ってでも、逆にあまりにさらっと描かれていた戦友とのエピソードをもっと丁寧に描いてくれていたらと残念でしょうーがない。
ただ忘れたくない昭和のあの時代と「三丁目」の人たちに再会できたことだけは純粋に嬉しかった。





2007/11/1 【 エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜 】

エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜」を観た。

「バラ色の人生」「愛の讃歌」など、数々の名曲で世界中を魅了したフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフの生涯を描く伝記ドラマ。

孤独な天才の姿回想シーンを挟みこみながらすすんでいくので、そこいらへんの時系列が混乱してしまいがちになるが、見えるのは愛に傷つき、希望を失いながらも歌への情熱だけは決して失わなかったピアフ像。
ピアフ役のマリオン・コティヤールは実は正統派美人だというが、薬物中毒や不摂生がたたってその姿はヨボヨボの老婆そのものに見える47歳までのピアフを見事に演じきる。子供時代に極貧の生活から始まり路上で歌いはじめやがて成功をつかみスポットライトを浴びる表向きのキレイなイメージが覆されるほど、酒癖が悪く下品で傲慢な姿を熱演。これは怪演とも言えるほど。
何があっても歌い続け、「水にながして」の♪いいえ私は後悔していない♪の歌詞はなんとも重みがある。





2007/11/1 【 ヴィーナス 】

ヴィーナス」を観た。
主演はかの‘アラビアのロレンス’の名優ピーター・オトゥール。受賞ならずも本作で8度目のアカデミー賞ノミネートを果たす。

20代の奔放な女性を求める老練なプレイボーイの姿を切なく描いている。年齢が年齢だけにエロ爺と切り捨てることもあるかもしれないけれど主人公モーリスは人生を謳歌し、「快楽の追求のために生きている」と言い切る。先の見えた老人に‘ヴィーナス’と思われる若い娘は美人でもなく教養もない若いだけが取り柄のいまどきの女性という設定がミソ。精神的には老いを感じさせない情熱もヒロインにすっぽかされた姿なんて気の毒でなんかど〜んと暗くなってしまった。、この作品はあくまで淡々としていてそれだけにリアルさが重い。
本来ヒロインがもっと魅力的で全体的にコメディータッチに描いてくれたら観やすかったかもしれない。





2007/5/8 【 エターナル・サンシャイン 】
2004年アカデミー賞脚本賞受賞のラブロマンス「エターナル・サンシャイン」をDVDにて鑑賞。
変顔のジム・キャリーはともかく相手役のケイト・ウィンスレットは超苦手な女優。太めなのに気が強そうで・・・(太めが嫌いなのではなく太い程におおらかでヒトが良さそうな先入観がある為)。今回の役はまさにイメージそのものの役
(-_-;)・・・・・・・ながら・・・以外にもなんとすっかりはまってしまった。
過去・現在・未来の時間軸の他に脳内の世界も交差しまくるのでわけわからなくなりがちながら、あまりのリアルさにいつの間にか引き込まれる。
喧嘩や気持ちがずれると相手を許せないと冷静に欠点を並べあげて分析することはできるけれどこれは心の芯とは別ものだったりする。ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットの2人も決して羨ましくも理想のカップルでもないながらその苦悩する気持ちに完全に感情移入しまくった。お互いに相手をなじるテープを聞き恋の痛みも喪失感も知った上でこれからの2人の恋がはじまろうとしている。
時間軸の交差を知った上で繰り返し鑑賞したい作品だ。
因みに私のprofileページのfavorite musicにもある♪Everybody's Gotta Learn Sometimeby Korgisはこの映画ではBeckバージョンだが、これもたまらなく良い。この素敵な曲にぴったりのラブストーリーだった。




2007/5/1 【 あるいは裏切りという名の犬 】

仏映画「あるいは裏切りという名の犬」を観た。なんともしゃれた邦題に感心する。
原題は「オルフェーヴル河岸36番地」つまり「パリ警視庁」。
実際に警察官だった監督と共同脚本として関わったのが元刑事であり、実体験のエピソード(捜査班BRIBRBの確執・手柄を立てるための独断介入・刑務所への投獄etc)が元になっている。この映画製作で自身の辛い過去とパリ警視庁の内部をさらすことで長年耐えてきた痛みが軽減されているよう祈るばかりだ。
主演のダニエル・オートゥイユが演じた寡黙で陰のある男が最高に渋い。これと対極なのが宿敵のジェラール・パルデューだ。権力志向で、どんな手でも使う自分勝手な嫌な男ながら警官という職業にしがみつくしかないのは哀れにも思える。なんともいえない重暗い空気感と緻密な伏せんと先の読めない展開が、警察を舞台とした哀しく切ない男同士の対立も含めて「インファナルアフェア」に通じるものがあった。
ロバート・デニーロがジョージ・クルーニーを相手役にリメイク中ということなので楽しみにしたい。





2007/4/14 【 悪夢探偵 】
「悪夢探偵」を観た。大手ハリウッド社からリメイク・オファー殺到だという。
「ああいやだ、ああああいやだ、ああいやだ。」と言いながらも他人の夢に入り謎を解く主人公は松田龍平。
お役に立ちたいというより嫌々巻き込まれていく様子が上手かった。
冒頭の原田芳雄が夢でよく見るという髪の長い少女のあたりで、ぞっとするようなホラー系を漂わせているところまではすごく良かったが、その後はまるでスプラッターじゃん(-_-;)。これR12指定だけどこれじゃ緩いんじゃないかというくらい耐えがたいショッキングなグロなシーンのてんこ盛り。ヒロインのhitomiはミニスカートと脚と顔のアップシーンが多くてくど過ぎ。
血飛沫映像は、ああいやだ、ああああいやだ、ああいやだ。




2007/4/3 【 あかね空 】

直木賞受賞の山本一力原作の映画「あかね空」を観た。
京都から来た英吉(内野聖陽)と明るい江戸っ子のお文(中谷美紀)の豆腐屋とその家族の絆を中心に江戸の深川を舞台に庶民の暮らしと人情を描いている。
当時は豆腐には何もつけないでそのまま食べたのも発見。
「あかね空」というタイトルだけあって夜明けを告げるあかね空は印象的。冒頭の永代橋のセットも素晴らしく、また深川蛤町の裏長屋も情緒たっぷりで江戸の雰囲気がたっぷり味わえた。
主人公以上に印象的なのが傳蔵親分。凄みは半端ないながら品があって知恵があってなんて粋な・・・と思ったらなんと内野聖陽が一人二役。畏れ入りました。ラスト傳蔵親分が帰って行く時もあかね空だった。
隠された秘密 が当人へ伝わるか伝わらないかが謎解きないまま終わるし全体的に説明的に描いていないところがとても好感。





2007/4/2 【 アルゼンチンババア 】

よしもとばななの同名小説を映画化した「アルゼンチンババア」を観た。
タイトルがインパクトあって興味をひかれたけれど、アルゼンチンタンゴとかの場面も中途半端でアルゼンチンと付いている割にリンクは少ない。
主演の掘北真希はとても透明感があり、役所広司はダメ親父ぶりが良かった。けど、この作品の最大の失敗がアルゼンチンババアの鈴木京香のミスキャストだと思う。白髪でボロ服で臭くても綺麗過ぎ。何故あそこまで完璧メイクしている必要があるのかも疑問。ということで誰が演じれば良かったかというと例えば故岸田今日子、夏木マリ、吉行和子etc 。あまりに綺麗で若いババアの為、過酷な人生経験などが伝わって来ず全く感情移入できないのが残念だった。





2007/3/4 【 蒼き狼 】
遊牧民の騎馬軍団を率いて至上最大のモンゴル帝国をつくったチンギス・ハーンを描いた「蒼き狼」を観た。
主人公の反町隆史はワイルドさはよく出ているもののあれだけの民を率いた指導者として人間的なカリスマ性が感じられない。
女性陣は軒並み? 妻役の菊川玲の演技力の低さ、つたない日本語を話させてまでの韓国人Araの起用が理解できない上に女兵士としての不自然な存在感、母親役の若村麻由美は演技派ながらナレーションはあまりに説明的で誰がどういう感情かまで語ってしまっている。この母親役だけは確実に老けていくのに他の出演者は比例していないのは不自然。
角川春樹が構成27年も掛け、予算30億で制作した作品の割には、何も残らない。何度もある戦闘シーンはどれも似たり寄ったりだし、27,000人ものエキストラを使ったというシーンもCGと代わり映えない。CGで良いじゃん。これって無駄使いといえるかも。
但し、雄大なモンゴル高原の風景だけはとても見応えあった。




2007/2/13 【 ウール100% 】

ごみ屋敷と言われる家に住む姉妹役が、岸田今日子・吉行和子で面白さが確証されているものと思って観たら・・・全く面白くなかった。

なんじゃ「アミナオシ」・・・。これが登場した段階で一瞬にして引いてしまった。もし1人だったら確実に途中で劇場を後にしていた。最後まで頑張って観たのは連れがいたせい。

「アミナオシ」がこの2人の姉妹の若き日のトラウマが呼び起こしたとしても監督の観念が説明不足のまま進展していって全くついていけない。加えて音楽も途中で挿入されるアニメも全部気持ち悪い

最近日本映画頑張っているだけにこの面白そうな邦題で騙された気分。大人のファンタジーという感想を多く聞くけれどこの空気感は私には全く合わなかった。





2007/1/19 【 王の男 】

韓国のアカデミー賞と言われる大鐘賞では史上最多10部門受賞。本国韓国では2006年に、観客動員数1230万人で4人に1人が観たという歴代興行ランキング2位の超大ヒットの「王の男」を観た。

予告編とタイトルではそれほど期待していなかった・・・が、これは面白い!韓国史上最大の暴君といわれた燕山君(ヨンサングン)とチャンセンとコンギルという2人の宮廷芸人の三者を中心に描いている。

王はその狂気・残虐・幼さ・孤独・悲しみが、チャンセンは正義・男気が、そしてコンギルは美しさ・優しさ・純粋さを この三者それぞれの俳優陣の演技がお見事!脇役陣も芸達者で層が厚く見応え充分。

絢爛豪華な宮廷を舞台に入り乱れる人々の感情に笑ったり、泣いたりした。最下層の身分ながら二人の芸人の崇高な生き様と真っ直ぐな気持ちがいつまでも心に残った。





2007/1/3 【 大奥 】

女たちの愛憎劇を描いた時代劇「大奥」が、三度のテレビシリーズを経て映画化。大奥史上最大のスキャンダルと言われる「絵島生島事件」を中心に様々な人間関係を描いている。

絵島(仲間由紀恵)、月光院(井川遥)、天英院(高島礼子)の三者三様の恋の対比の中、「絵島生島事件」の実行犯を演じた宮路(杉田かおる)の複雑な情念としたたかさが特に印象的だった。

華やかだったという江戸の町人文化の演出が見事で歌舞伎や祭は見応えあった。そして次から次に女優陣が身に付ける打掛という着物は一億以上かかっているだけあってまぁ呉服展示会をみるがごとく豪華でため息が出るほど絢爛豪華で冒頭の城内の花そのもの。

何故生島新五郎が絵島に恋したのかと、同じ役者同士の天英院の恋人と生島の葛藤がもっと丁寧に描かれていたらもっと良かった。そして、主演の仲間由紀恵はどうしても「巧妙が辻」の千代のイメージがだぶるようなキャラ(しっかり者)だった為、アレ?同じじゃん みたいな印象になったのは残念。





2006/12/30 【 硫黄島からの手紙 】

クリント・イーストウッドによる続く硫黄島の第2弾の「硫黄島からの手紙」を観た。
アメリカが5日で落ちるとされた硫黄島戦を、日本軍側の視点から描いた硫黄島陥落までの36日間の戦闘を描いた作品。

なんと21,000人のうち、生還したのはわずか1,000人だったという先に「父親からの星条旗」を観ていたので余計に心頭できた。日本人でさえほとんど知らないこの題材をこうやって公にしたイーストウッド監督に畏れ入るばかり。

陸軍中尉、元馬術競技金メダリスト、パン職人、元憲兵、そしてアメリカ人の兵士も家族への思いは皆同じ。手紙を前にする時だけは皆同じ顔。なのに何故こーいった状況になっているのか・・・。

一緒に観たムスメが印象的だと言ったのが、栗林中将の「家族の為に死ぬことを決意したのに、その家族を思うと死ぬことが出来ない。」という台詞。確かに・・・戦場では家族を守るためだと自分の死を納得している葛藤が伝わってくる。それにしてもあの状況での栗林中将の人間性には感服するばかり。そしてやはり正しい人として描かれる元オリンピック乗馬選手も死に様は生き様そのもの。栗林中将の奇策に逆らった中尉の皮肉な末路を見ても「生きたように死ぬ」という言葉を実感した。

「天皇陛下万歳!」「靖国で会おう」の重さを感じるとともにこの台詞の作品は日本では撮れなかったかなと再度クリントイーストウッドに敬服。





2006/12/23 【 明日へのチケット 】

ローマへと向かう列車を舞台に、3人のカンヌ国際映画祭のパルムド−ルの受賞監督が3つのエピソードを作った。

1話はイタリアのエルマンノ・オルミ監督が淡い恋をした老教授を、2話はイランのキアロスタミ監督が救いの無い傍若無人なオバタリアンを、3話はイギリスのケン・ローチ監督でサッカーサポーターの少年達を描いている。これらの話がそれぞれ全く独立しているのではなくを中心に3話ともアルバニア難民を絡めて描いている。
この監督の顔ぶれはかなり贅沢だというが私はこの監督の作品は知らない(-_-;)。1話と2話は特別ストーリーに山があるわけでもなく淡々としているのがある意味退屈にも思えた。3話目のサッカー少年の葛藤は意外な展開で楽しめ、この列車を降りてからのこのアルバニア難民を見つめる少年達の表情がとても良かった。ストーリーごとの別々の車両の為、イタリアの列車の車内の様子は興味深かった。





2006/9/26 【 イルマーレ 】

韓国映画で大ヒットした作品をハリウッドでのリメイク版。イルマーレは「海」という意味。
オリジナルでは文字通り海に浮かぶ家でしたが、こちらは原題Lake Houseとあるように湖のほとりの家。今回イルマーレは鍵となるレストランの名前で出てきます。主人公の年齢がオリジナルよりぐっと上がっいるのも原因か全体的に大人っぽくなっているような。彼と父親、彼女と母親という親子関係を描く上での台詞などは良かった。
2004年に生きる彼と2006年に生きる彼女の設定自体に辻褄を合わせるのが難しいので敢えて触れませんが、この発想も展開も別に面白いとも思えなかった。まっ時空警察がいたら間違いなく許されない内容でしょう・・・。
文句なく良かったと言えるのは出会った日とエンディングに流れた♪This Never Happened Before _by Paul McCartneyでした。





2006/9/20 【 うつせみ 】

韓国映画「うつせみ」をレンタルにて鑑賞。

上映していたのに劇場に足を運ばなかったのはただただ、この地味〜なタイトルのせい。「うつせみ」とは蝉の抜け殻の事らしく、確かにヒロインをまさに象徴するけれど考え過ぎのような・・・。韓国題は「空き家」英語タイトルは「3-iron」ですが、断然邦題より良い!ということで邦題は??ですが、作品は凄い!!

こんな不思議な恋愛映画観たことない。

映像が美しい。そしてこの2人がほとんど語らない。主役はなんと一言も喋らない。良い映画に言葉は不要ということか、或いは恋愛に言葉は不要ということか・・・目からうろこ。

映画紹介に「監督のキム・ギドクは敬虔なクリスチャンだと知っておいたほうがいいかもしれない」とあった。ということは、青年の姿を借りたというメッセージがあると考えると尚更奥深い。体重計のメモリにこの映画の真骨頂が隠されているのかも。





2006/8/30 【 UDON 】
讃岐うどんをテーマにした「UDON」を観ました。
本広監督の郷土愛がぎっしり込められているだけに香川の地元には何より嬉しい作品でしょう。県民栄誉賞モノかもしれません。
9割実話ということで、実際のおみせの方々の表情はのどかな風景とマッチしてとっても良いスパイスになっています。が、フジTV「特ダネ」でもしきりと褒めまくり+PRしていましたが、本編でも似たような場面が・・・なんかフジTV色出し過ぎかも。
全体的には「ノビきったうどん」という感じ。なんかくどい。これでもかというブームをたたみかけるシーンもくどいし、後半の父息子の会話も表情だけで伝わるのに全部台詞にしているのもくどい。エンドロール後のお楽しみにつながる付箋になっているとはいえ「キャプテンUDON」という特撮は果たして必要だったのでしょうか?
あれもこれもと盛り込み過ぎたと思える分 監督の思いが強いとも言えるかもしれませんが・・・。
それにしても醤油で食べるうどんがあるとは知らなかった〜。「裏で勝手にネギ掘って」というシーンが受けた。改めて考えると讃岐うどんってもしかしたら食べたことないかも。是非シンプルなの食べてみた〜い。




2006/8/19 【 家の鍵 】
イタリア国内で65万人の動員の大ヒットを記録した岩波上映作品「家の鍵」を観ました。
障害をもって生まれてきた息子と15年ぶりに初めて対面した父親の心の葛藤へ視点をあわせ丁寧に描いています。所謂イケメンオーラでいっぱいの超美形俳優キム・ロッシ・スチュワートを父親役にすることで、カッコつけてられない厳しい現実と向き合わせている効果はすごい。同じ理由でやはり障害者の娘の介護を20年している母親にシャーロット・ランブリングを起用したのも大正解。似つかわしくない母娘、父子だけに外見から想像できない背負っているものの大きさを感じさせられます。ところで自分の人生を娘に捧げ介護について達観したかのような母親が、苦悩をみせる唯一の駅のシーンは圧巻で、この後の台詞がなくても表情だけで悲しみや苦しみが十分に伝わってきます。
この作品のすごいところは父と息子の立場をラストのラストで逆転させている点。
決して「介護する側される側」とか「与える側与えられる側」 という一方通行で終わっていないのが良い!
  




2006/3/11 【 ある子供 】

2005年度カンヌ映画祭パルムドール賞受賞作品。親になったばかりのこのカップルのじゃれあいを見ても漂うのは幼さばかり。自分に無関心な母親との家庭環境のせいなのか父親になった主人公=ある子供は愛を知らない。彼女への気持ちも愛というより‘彼女に捨てられたくない’というだけに見えちゃう。あきれるしかない彼の行動の幼児性をこれでもかと徹底的に描いたあと、自力で得ることになるこれまでにない新しい感情。厳しすぎる現実の生活を考えるとこの先どう変われるかわからないし何の保障もないけれど一歩踏み出せるんじゃないかと思わせてくれた唐突なエンディングと音の無いエンドロールの説明をとことん省いたリアリズムは秀悦。




2006/1/20 【 ヴェニスの商人 】

シェークスピアの作品を「イル・ポスティーノ」のマイケル・ラドフォードが監督・脚本。
ルネサンス期のヴェニスを舞台に絵画のような映像が堪能できます。ユダヤ人シャイロック役のアル・パチーノは圧倒的な存在感でそれに比べてキリスト教徒が軽薄〜。それにしてももしかしてこれがこの作品のテーマかと思うくらい「女は一枚うわて」だわねぇ。裁判シーンでの‘とんち’はまるで一休さん。(シェークスピアと並べるのはヒンシュクかなぁ)そこまでは良いとしてもその後の指輪で旦那までやりこめるのは う〜ん・・・。それに比べて男どもの頼りないこと・・・。バッサーニオは無一文の情熱家と言えば聞こえは良いけれど求婚は打算だし単なる放蕩者じゃん。ってことでバッサーニオにも旦那を試したりする姫にも感情移入などできるバズもなく、ただただシャイロックの哀しみが心に浸みました。
影武者さんまで「ああいう風によってたかってユダヤ人いじめるからフリーメイソンなんかできちゃって 裏世界を牛耳られるんだ」と珍しく?ユダヤ人に哀れを感じたようでした。




2006/1/7 【 男たちの大和/YAMATO  】

去年から戦後60年ということで戦争映画上映が多かった中、ローレライやイージスよりダントツに良かった。約6億円をかけて原寸大190mを再現したというYAMATOは圧巻。
映画評には「タイタニック」「パールハーバー」「プライベートライアン」「ブラックホークタウン」etcのどっかで観たようなシーンに‘二番煎じ’という声もあるようです。が、私は邦画のスケールとは思えない迫力の戦闘シーンと壮絶な覚悟と想いに圧倒されっぱなしでした。YAMATOに向うアメリカ軍艦催機はこれでもかという数で新鋭空母12隻、艦載機およそ800機、大和の護衛機はなかったとか。無謀としかいえない軍の計画に従うしかなかった組織の中で下層部のまだ1617歳の少年と言える兵士達をきちんと描いていて、死の決戦の直前に思い思いの人の名前を叫ぶシーンには言葉がありません。更に奇跡的に生き残った者の苦悩に焦点を当てた点も良かった。それにしても大切な人が死を覚悟しているのを受け入れる周囲も、今生になるかもしれない別れを告げるというのはあまりにも悲し過ぎます。
  




2005/11/7 【 ALWAYS 三丁目の夕日 】

「携帯もパソコンもTVもなかったのに、どうしてもあんなに楽しかったのだろう」と謳っているように東京タワーが完成する年の豊かではなかったけど明日への夢があった昭和の時代。昭和33年はまだ生まれていなかったのでまさに親の青春世代でしょうが、なんという懐かしさでしょう。巷でも白黒テレビで力道山の試合を見せ懐かしいポスターを貼りBGMに昭和歌謡を流す飲み屋さんが人気です。この映画での当時の再現した映像はあまりに見事で一見の価値あり。駄菓子屋、ちゃぶ台、空き地の土缶、たばこ屋etc本当にディテイルが感動もので楽しめます。自分が子供だった頃にタイムスリップし、子供の頃田んぼの向こうに見た夕日を思い出しました。子供の頃、雑誌の付録には東京タワーの組立工作が入っていたっけ。忘れかけていた記憶が次々浮かんできます。

つぎ当てのセーター、子供の好物の焼鳥、クリスマスプレゼント、見えない指輪、故郷の母etcと何箇所ものエピソードに熱くなります。クリスマスについては親の立場として自分を重ねて、(これでも私もまともな親なのです)子供の夢を守ってあげる大人の愛にじ〜んとなりました(自己陶酔)。が、反面気になったのがこの映画を観る子供達と出演の子役。この子達はこの映画を通じて夢が壊れちゃうのでは?

フツウだったことがフツウじゃなくなって、当時のフツウを求めるのが難しいけれど、せめて人間関係はずっとずっとフツウでありたい。  



2005/10/21 【 ヴェラ・ドレイク 】

シアタープレイタウンで「ヴェラ・ドレイク」を観てきました。

これは今月の映画サークルでもこれから観たい作品でダントツの注目度でした。

主人公に邪気がなく本当に人の良いおばさんで存在が周囲を明るくしどれほど愛されている女性なのかを一瞬にして感じ取れました。罪をおかしたことよりも家族に知られることをおそれたことからも彼女の人柄が読み取れます。そのヴィラの秘密とは…。これをどうとらえるかは観客次第でしょう。私は最後までヴェラが何故そうするようになったか分からなかったし(泣いていて台詞にならなかった)、同情できる境遇のムスメさんばかりではなかっただけにそれをしている時のヴェラの気持ちがわからなかったのでそれほど感情移入できませんでした。
ただ、この主人公を演じた女優さんはすごいです。イメルダ・スタウントンはアカデミーの主演女優賞にノミネートされながら惜しくもヒラリースワンクがオスカーを受賞しましたが、オスカーに十分値するくらい圧巻でした。というわけでストーリーより演技力に圧倒されたように思います。




2005/9/3 【 海を飛ぶ夢 】
本年度アカデミー賞外国映画賞やゴールデングローブ賞最優秀外国映画賞などなど数え切れません。 このニュースが印象的だったのか興味を示した長女と一緒に鑑賞。実在のラモン・サンペドロがモデルとなった作品。 25歳で海の事故で首から下が不随の身となりそれから26年間家族の献身的介護で過ごしながら望んだこととは・・・。 どっかで見たような・・・と思ったら前にシネマライズで観た 「夜になる前に」 でキューバのカストロ政権下で迫害を受けた作家を演じていたバビエルバルデムじゃないですか。 実年齢は30代半ばということですが5時間も特殊メークに時間をかけ運命を分けた日以前の若々しい頃と50代を見事に演じ分けています。 この主人公と同じく四肢麻痺の神父の説得がいかにもステレオタイプのものではあっても、それを含め介護する家族や生きて欲しいと願う人々のそれぞれの立場の誰もがまっとうで 「正しい」「間違っている」 というカテゴリー分けることは難しい。 義姉が神父に自分にはよく理解できないけれど私にも判ることがひとつだけあると言って「あなたは やかましい」と言うのが痛烈で思わず拍手したくなりました。 この映画の中の女性の中の誰より存在感を感じます。 同じテーマで 「ミリオンダラーベイビー」 が浮かびますが、どちらも倫理に反していても自分の願いを叶えてくれる人を実感した時、本当に幸せそうだったのが印象的。 自分だったら・・・家族だったら・・・と色々考えちゃう。



2005/8/20 【 姑獲鳥の夏 】
何故か次女が京極夏彦にはまりまくり、この夏休みは京極夏彦漬けになっているので一緒に観ることに。 小説の雰囲気を再現した京極堂や眩暈坂や書庫や久遠時病院のお屋敷セットは美しくもっと観たかった。 ホラーではないにしろ、いくらでもおどろおどろしく人間関係もドロドロに演出できたと思うのですが、予告編以上のものはなくて、あっさりしていて拍子抜け。 さながら変身ヒーローもののフラッシュライトいっぱいの映像や脳だの風鈴だけのイメージショットがマイナス。 加えて肝心の関口の影が薄すぎ。 子供の感想は「本の良いところが全然なかった」でした。 一方、影武者さんは昔から「量子力学」の話が何故か好きなせいか、京極堂の台詞にあったのでもっと聞きたかったくらいだと結構喜んでいました。 私は量子力学はともかく(^_^;) 堤真一の長台詞はよく覚えたものだと感心です。



2005/7/16 【 宇宙戦争 】

スピルバーグ監督なので期待大だっただけにがっかり度も高い。 原作に忠実だから仕方ないのかもしれませんがストーリーに相当無理がある。 主人公の活躍があって、宇宙人が滅びるというものになっていなくて、主人公は戦うヒーロではなくただ運よく逃げたラッキーマンなのね。 911テロやスマトラ沖地震などとリンクする映像など特撮は確かに見ごたえありますが、戦争映画ではなくホラー映画とパニック映画を足して2で割ったような作品。




2005/4/26 【 インファナル・アフェアV 】
インファナル・アフェアT Uはレンタルでの鑑賞でしたが、完結編のVは映画館で。 それにしても観客は5人くらいしかいませんでした。 過去と現在が行ったり来たりの時系列に加えて、妄想と現実入り混ぜているし、TとUのシーンがVで意味を成してきたりするのでこのVはTとUを観てからの鑑賞をお薦めします。 複雑な構成にしているので私の頭では1度観ただけでは結構大変でしたが、潜入捜査官と潜入マフィアの生き様やかけひきが大変面白かったです。「運命は人を変えるが、人は運命を変えられない」という台詞がとても重いわ。
 前作でも流れて今回も重要なシーンで聞くことができる♪失われた時間(被遺忘的時光)(by蔡琴)♪が良いです。この曲が流れているオーディオ店で主役の2人が出会うシーンが特に好き。 DVDで繰り返し観たい作品です。



2005/4/23 【 エイプリルの七面鳥 】
「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」に続き人生2回目の劇場貸切でした。しかも土曜日。この映画館の経営が心配です。映画は家族から厄介者扱いさせているエイプリルが、感謝祭に家族を招くという一日を綴っています。 母親が病気な為、最後になるかもしれない特別な感謝祭です。 エイプリルの恋人と、必死に母親を娘のところへ連れて行こうとする父親の男性陣がとっても良い! 準備はトラブル続きで、人種や国籍を越えた色々な面白い隣人達が登場します。 果たして無事に七面鳥が焼きあがるのでしょうか?? 映画観ていて思い出したけどアメリカ滞在中に感謝祭やクリスマスといった行事では必ずグレービーソースがかかった七面鳥を食べたっけ。 毎回食べる側だったけどターキーを上手に焼くって大変なことなのね。 こじれていた母娘の心の変化と周囲の愛に心があったかくなりました。Happy Thanksgiving!



2005/3/31 【 アビエイター 】
本年度のアカデミー賞で、編集賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞とかの技術部門を独占したものの、ディカプリオが男優賞でオスカー受賞できなかったことがやけに話題になっていた大富豪ハワード・ヒューズを描いた作品。 内容は、まさに今話題の企業買収なども織り込まれ、そういえば堀江社長も絶賛していたようです。 飛行シーンはこっちまで耳鳴りしそうに迫力あって臨場感ありました。 世間のディカプリオ人気にはまったくついていけないのですが、映画の冒頭、母親に体を洗ってもらいながら覚えたquarantine(隔離)という言葉がキーワードとなって、極度の脅迫神経症で壊れていく主人公を渾身の演技でみせてくれて意外にも良かったです。 自室に立てこもり半狂乱になるシーンは見応えありますが全裸になる必要あるんでしょうか?ファンサービスかもしれませんが観ても嬉しくないわ。 アカデミーの助演女優賞をとったケイト・ブランシェットの評価は総じて高いようですが、私は案外背中がきたないなってのが印象的でした。



2005/3/24 【 イブラヒムおじさんとコーランの花たち 】
パリの裏通りのユダヤ人街で父親と2人で暮らす薄幸な少年と、トルコ人の食料品店主との心の交流を描いた作品です。パリの猥雑な下町の描写が好き。いつもあたたかく少年を見守っているイブラヒムおじさんの背景にはイスラムのコーランがあり、その教えの大きさを少年自身が実感としていくのですが、後半2人でのトルコへの旅も含めて全編をあまりにもあっさりと描いていたのは残念です。ラストはあららという間に終わってしまいました。でも別の意味でこの映画は記憶に強く残る作品となりました。平日の午後ってこともあったかもしれませんが観客は私と影武者さんのみ。初の貸切〜〜〜。



2004/12/28 【 アンカーマン 】
ユナイテッド航空の機中で観ました。 正確なタイトルは「アンカーマン:ザ・レジェンド・オブ・ロン・バーガンディー」。 娘が声を出して笑っていたおバカコメディー。 これも新作と思えないような印象を受けたのは設定が1970年代だからでしょうか? サンディエゴを舞台に活躍するTVのアンカーマンが主人公。このロン・バーガンディーを演じているウィル・フェレルは、アメリカでは有名なコメディアンだそうで、臭いヘアスタイルやファッションや口調に思わずクスクス。 いきなりミュージカル風になったり無理な展開も何でもありのハチャメチャな作品でした。2004年:アメリカ製作:7月9日アメリカ公開/日本公開未定)



2004/11/26 【 オールド・ボーイ 】
2004年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。 土屋ガロンのコミックを韓国が実写映画化したもの。 この映画はとにかく先が読めない展開が魅力なので、内容については各種映画書評を一切見ないで無の状態で鑑賞されることをお薦めします。 ハリウッドでリメイクもされるようですが、どうでしょうか?展開が分かってから観ても面白みは半減でしょう。 理由も分からず15年間監禁された主人公をチェ・ミンスクが演じています。 酒癖の悪いのん気なサラリーマンから復習の鬼に化す姿は監禁前と後で体重を10キロ増減させたこともあって確かに同一人物と思えないほどです。 ここで内容について触れないほうが良いと思いますが、アルバムのぺージをめくるシーンは衝撃的でした。 ラストシーンも意外で最後まで緊張してしまいました。



2004/11/13 【 IZO 】
私は予告編を観た段階で???で本編を観ることになろうとは夢にも思わなかったのですがどーしても観たいという影武者さんに折れて観るハメに・・・(影武者さんは1人で映画を観たのは20歳頃に2回あるのみだそーで今では私と一緒じゃないと映画館にも行けないおじさんになりくさったのです) つう訳で今回の感想はどーしても観たいと粘ったご本人に・・・(以下by影武者)
いるんですよね。こういう映画を批判する人が。訳分からないだとか、言う人が。 何処がわからないのか聞きたいですよ。きっとマトリックスなんか見ても理解できないひとなんでしょう。 最近はNHKの新選組ブームですが、IZOと聞いて、人斬り以蔵とか、幕末の土佐藩とかの史実を知らない人にはピンとこないだろうし存在の不条理さを問う、哲学的な基礎知識が無ければチンぷんかんぷんでしょうね。 きっと映画というのは限られた時間のなかできっちり理解できて、すっきり納得できる映画でないと とたんにけなす人が 大手を振って2chネルののりで暴言を吐く、そういったひとをみなIZOに一刀両断にして欲しいです。 細切れに出てくる脈絡の無いような挿入画面も、全て意味をもって迫ってきます。 しかしながら、どうあがいてもこの世の不条理さを解決することなどできないと知っている人だけが、斬って斬ってきりまくる、そしてその先にあるものが無明であるとしっているからこそ楽しめる映画だと思います。



2004/10/24 【 浮気な家族 】
「オアシス」で脳性マヒのヒロイン役ですさまじい演技をみせたムン・ソリが今回もすごい!ここまでやるかというくらい濡れ場は半端じゃありません。 お飾りじゃないこれぞほんものの女優。 英題「A Good Lawyer's Wife」のとおり弁護士一家の話。 浮気三昧な夫、身勝手で好き放題生きた死期の迫った舅、それを放って恋人 のもとに走る姑と内情はバラバラでありながら淡々と日常を送っている様子に儒教国としての現代韓国の一面を見るよう。 「浮気な家族」とは随分ストレートな邦題をつけたもので弁護士の妻役のムン・ソリのアバンチュールも加わりそれぞれがそれぞれですが、この妻のドライさが際立っていました。 母子の関係も加わり家族を考えさせられる一作でした。


2004/7/20 【 ウォルター少年と、夏の休日 】
スクリーンで観たい脚本No.1を完全映画化。 夏休みに少年がTVも電話もない老人のもとへ預けられるといえば「おばあちゃんの家」が浮かぶし、大活躍の昔話といえば「ビッグフィッシュ」に通じるところもあります。 先の「ビッグフィッシュ」とこれといい、「トロイ」と「キングアーサー」(未見)の上映時期も近いというのはいったい偶然でしょうか。 製作側にも流行元でもあって発想を流しているかのようで不思議です。 来日時の気取った姿やこまっしゃくれたインタビューを聞くにつけ実はハーレイ・ジョエル・オスメント君って苦手なんですが、実力派ベテラン俳優のジイ様二人にひけをとらない存在感はたいしたものです。 死に様をみればその人がどう生きたかが分かると聞いたことがあります。 このジイ様達もまさにそれ。 生も死もあっぱれです。 ジイ様のアラビアンナイトのような昔話も現役の不良老人ぶりも一環として男の中の男。 少年にとって成長過程にこんな素敵なお手本があったらさぞ将来イイ男に育つだろーな。 原題は「SECONDHAND LIONS」。これは劇中にも登場する年老いた中古のライオンであり、二人のおじいさんたちが少年に出会う前の姿の象徴として印象的に描かれているものですがタイトルはこの方がしっくりくるんだけど・・・。少年を前面に出す邦題はハーレイ君人気を当てにしたせこさが感じられてすっごく嫌。



2004/7/9 【 赤目四十八瀧心中未遂 】
昨年の日本映画で各賞をとりまくりその数20以上だとか。私は舞台となった兵庫県尼崎の場末さばかり印象に残ってうまく感想がまとまらないので今回は影武者さんにお願いしました。 
(以下 by影武者)
映画の冒頭と終わりに出てくる 蝶を追う少年、これが 荘子の胡蝶の夢を知っていればわかる映画だと とある映画評論にかいてありました。さもありんなん。 この映画を 長すぎるだとか 淡々としていて飽きるとか言う批判がありますが、寝ては覚め 覚めては見つつ幻の と言うとおり、とらえどころの無い夢の中の映画でしょう。 この中では登場人物の話のつじつまが合わないとかの批判は、一切の無用の長物 夢でつじつまの合う話を見たことがありますか。 昭和浪漫映画ではなく 紛れも無く現代劇であろうに、その映像たるや まるで 夢に出てきそうなオブジェの数々、30年前ならあったかもなというような 共同アパートで、彫り師やら拳銃やらパンパンやらやくざの兄に売られる妹とか、現実にありそうで なかなかお目にかかれないものを リアリティーを以って見せてくれるのですが、やはりどこかおかしくて つじつまがあわない。 つじつまのあわない夢をみて、それにどうしても 意味付けをしないとだめな方は
公式HPの評論なんかを読んで納得するかも知れませんが、わたし的にはどうでもよいことです。映画ってそういうものでしょう。



2004/3/1 【 オアシス 】
2002年ベネチア映画祭トリプル受賞の韓国映画。刑務所を出たばかりの男と重度脳性マヒの女の愛。撮影終了後も脊髄と骨盤に生じたゆがみの治療を続けたというあまりにも迫真の女優の演技に圧倒されます。すさまじいです。凄すぎる〜〜!おそらく人生ただ1度の愛に向き会う女性の心を映すものとしてさりげなく挿入されたファンタスティックな映像は厳しい現実を前に叶わない空想だけにひたすら痛いです。今回珍しく平日の昼間に映画館に行きましたが、客層はもちろんヒマをもてあましているいわずもがなの奥様連中です(含私?)。映画の中で身障者があからさあまに偏見の目でみられて料理店に入店拒否をされる場面があります。おおよそそういった偏見を持った眼でみる人種がこの映画館の中の大多数の客層だと考えると回りの反応にとても関心がありました。監督は「障害者の差別や愛をテーマにした訳ではない」と言っているそうですが、でもこれはまさしく健常者が身障者は性欲があってはいけないと思っていることへのアンチテーゼでしょう。

 

 

2003/08/26 【 おばぁちゃんの家 】
韓国映画。 山村に住むおばあちゃんに最初反発していた今どきの現代っ子がひと夏を過ごすうちの心の変化という極めて単純な筋立て。 孫が祖母を粗末に扱う描写に驚くけど儒教の国でもあれは現実なのかなぁ。 泣ける映画とは聞いていたけどおばあちゃんの無償の愛に私もすっかりやられました。 一緒に観た子供もいつもゲーム機片手な少年が自分とかぶる点があるのか観る前はこの映画自体に乗り気じゃなさげでしたがラストはうるうる・・・。  このおばあちゃんは実際山村に住む77歳の素人ということだけど表情が忘れ難く終始胸が熱くなりました。 「全てのおばあちゃんに観て欲しい映画」ということだけど是非是非「全ての孫に観て欲しい」。 貧しく字も書けず非文化的な暮しをするおばあちゃんの不器用な愛に7歳の男の子が出来る、精一杯の「ありがとう」の気持ちにも、またウルウルきてしまう。さすが、韓国映画。お仕着せのない純粋な感動映画でした。

 

 
2003/02/06 【 オールド・ルーキー 】
1999年のメジャーリーグでデビューした実在の剛速球投手ジム・モリスの史上最年長の35歳のルーキーの半生。 親子愛、夫婦愛溢れてめでたしと言いたいとこだけど この奥さんの本音が出たとこがアレって思ってしまった。 昔パートナーが突然仕事を辞めた時、私はあんなこと思わなかったし言わなかったもん。(←これって自慢?)良し悪しの結果はその時に出ないから先を憂いたってしょーがないよ。 普段野球には無関心だけど選手一人一人の背景をもっと理解すれば野球も楽しめるものかもね。 先入観で持っている野球選手の悪いイメージを全部払拭してくれるような主人公のとってもあったかいフツウの家庭人っぽさが良い。それにしても陰で支えている選手の家族ってホント大変だぁ。 一見華やかな世界のようだけど試合の度に応援で消耗しそうって考えただけでも疲れる。選手以上にご苦労さまです。

 

 

2002/12/25 【 アイリス 】
 2002年度アカデミー賞助演男優賞受賞作。 イギリスの小説家アイリス・マードックとその夫ジョンの40年間に渡る日々を、出会いの大学生時代から、アイリスがアルツハイマーに冒された晩年までを交差しながら描いています。 病状がひどくなっていく妻を愛し抜き献身的に支えた夫の眼差しの優しさには学ぶものがあります。 この映画に限らずTVのドキュメンタリー番組で会社を辞めてまで妻の介護の道を選んだ旦那様達を観たことがありますが、双方老いた場合の介護って他人事では済まされないのよね。 フツウの精神状態でできる程易しいことじゃないしこりゃ確かに大変だわ。 が・・・私はこの映画に全く泣けなかった。 理由は晩年ボケたのは気の毒とはいえ若い頃の元気ハツラツお嬢さんのアイリスに何の魅力も感じられなかったから。 唯一若き日のアイリスを誉めるとしたら男を見る目があったってことでしょうか。 やっぱ男は女に尽くしてなんぼだわ。 ってなわけで ‘尽くす男 + フツウじゃない男’ をチョイスした私自身も先見のめいがあったってことでめでたしめでたし。

  

 

2002/09/18 【 ウィンド・トーカーズ 】
 1944年太平洋戦争の激しい戦闘の中、サイパン島を舞台に日本軍に解けないようナバホ族の言語を暗号にしたという実話に基づくストーリー。ナバホ族の青年を援護する任務についた海兵隊員の男同士の心の交流を描いた戦争映画にどーいうわけか忘れたころにチラチラと女性が出てくるのが唯一の不満。半端なのよ。 すっきり女気なしでいって欲しかった。でも世間で評判の悪い「パール・ハーバー」のゼロ戦に感動し名作と断言した身ですからこれが面白くないわけないのです。そのパールハーバーの日本人の描写のブーイングが届いたのかどうか知らないけど今回は随分マシになっていたし息をもつかせぬ戦闘シーンの迫力は見応えありました。ナバホ族の2人が築いたそれぞれのパートナーとの交流にジンとなっちゃた。ニコラスケイジの日本語が聞けますがパチンコのCMを思い出して思わずククッとなってしまったのは思いがけないおまけでした。

 

2002/09/18 【 インソムニア 】
 タイトルのインソムニアの意味は不眠症。アルパチーノだしロビンウィリアムス初悪役だしで面白さは手堅いばずでしたが見事にハズレ。「爪をきれいに切られ、髪を洗われた死体」からハンニバルのレクター博士並のサイコパス登場かと期待したら何これ。たいした意味無いじゃん。がっかりを通り越して呆れたわ。だいたい犯人自ら犯行を語らせる手法にもどうかと思うしCMでさかんに「精神的なストレスによって何日も眠れなくなり、恐ろしい幻覚症状を見ることもある。最悪の場合、死に至る」とかなんとかタイトルの説明付きで宣伝してるけど期待を煽るだけで内容的にそれほど重要とは思えない。結局、せいぜい普通の刑事映画っぽいしまるで火曜サスペンスドラマ的。不眠症のアルパチーノの血走った目や幻覚をみているうちに観ているこっちもぐっすり眠れちゃいました。アラスカの自然はなかなか良いです。冒頭に空中からの撮影がありますがこの映画の良さそこでお終い。

 

2002/06/10 【 I am Sam アイ・アム・サム 】
 2002年アカデミー賞主演男優賞ノミネート。ショーン・ペンが知的年齢が7歳の父親サムを熱演。 所謂泣ける映画と言われているだけあって正真正銘ピュアな親子愛にどっぷり浸れます。 一緒に観た子供は泣いていましたが が が 泣きを期待したのに肝心の私の涙の登場はありませんでした・・う〜んやっぱ私は親の器に欠けているのかなぁ(悲) 上映前からこのサントラの評判は聞いていましたが全編を彩る曲はすべてザ・ビートルズのカバー曲ばかり。 なんでも撮影前ショーンペンが自分が演じるキャラクターと同じ障害を持つ人々と一緒に過ごた際、この施設にいた人々の一番のお気に入りがビートルズだったことが影響しているとか。 娘のルーシーの名前も「Lucy In The Sky With Diamonds」からとっているし主人公もビートルズマニア(オタクとも言える域)を発揮してこの映画の陰の主人公はビートルズとも言えそう。 主人公の職場はお馴染みスターバックスやピザハットだったりしますが、私はこれまでそこで働く障害者の方を見たことないのよね。 これは日本人の障害者への心の狭さの一端なのかしら。 映画の帰りまさにその店の前を通った時、この扉の奥にもサムの屈託のない笑顔と無垢な人柄があったらなぁと思いました。 ところでこの親子の『こんなに幸せなのに、どうして一緒に暮らせないの?』というフレーズや『愛する者の本当の幸せの為自分は身を引いた方がいいのか』という考えは、まるで男女の恋愛に通じるではあーりませんか。 ムムム・・・

 

2002/06/02 【 活きる 】
 1994年カンヌ映画祭で審査員特別賞と主演男優賞受賞作品。 この監督とヒロインは「紅いコーリャン」コンビ。 幻想的影絵のシーンも多く色使いも音楽も素晴らしい。 1940年〜70年までの内乱戦・共産主義・文化大革命と流れる中国の近代史に翻弄されたある一家の歴史を10年区切りで描いています。 あー人間ってこんなにも打たれ強いものなのねぇ。 次から次へくる試練・苦境にあっても決して諦めない、投げ出さないというスタンスで人生を続けるってことを教えられました。 生きている限り悲しみは尽きないけどきっとその向こうには小さくても救いもあるってことがほっとする〜。 ぼんぼんの所謂バカ息子としてスタートしたこの主人公(父親)の人間としての成長も一見の価値だし愚痴ひとつ言わない芯がある奥さんも良い!。アタシもヘナヘナしてる場合じゃないわ。 幸せってなんでもない日常にあるのよね。 まずは家族がそろって食事をする幸せを大切にしよーっと。 ところで一人で渋谷に映画観に行くって聞いた誰かは「逆ナンでもしてくるんだろー」って思っていたようですが中国映画は毎度のことながら観客の年齢層高すぎて許容範囲越えてます。残念だわぁ(悲)。 まぁ悲しみの向こうに幸せはきっとあるとこの映画でも言っているから次回以降に期待 ん?

 

2002/05/22 【 アザーズ 】
 幽霊といえばある意味メッカともいえるイギリスのジャージー島にある歴史ある大邸宅を舞台としたお話。 厚いカーテンで閉ざされた光のさしこまない暗闇、過敏な精神状態、静まり返った部屋etcの整い過ぎた?条件のお陰で様々な怪奇現象に恐怖感も増幅。 陰鬱な空気の中ひたひたと迫り来る緊迫感に背中ゾクゾクしっぱなし・・・さてTVCMでおすぎが言ってる「言いたいけど言えない」という気になる結末はスゴイ。 一瞬最大級の寒気が襲ってきましたがその後コワサより切なさで胸いっぱいに・・。 監督自身もコペンハーゲン学派のニールス・ボーア氏に造詣がおありのようですが一緒に観た人もこの映画は物理学に通じると言っております。 物理学者がこの世は唯一の世界という私達の考えそのものが間違っていると示唆し 多くの違世界が交じり合ってお互いに干渉し合っているのだと主張している点は興味深い。 これは全てのものは‘波動’であるという‘量子力学’でも証明されているそうですが 同じ科学者としてこの類に否定的な早稲田の大槻教授はどう考えているんでしょうねぇ。この後パラレルワールドなるものについてもご教授いただきましたが が ・・・チンプンカンプン。 誰かサルにでも分かるように教えてぇ〜 ところで生者・死者が平行して存在するという世界観は 敬虔なクリスチャンであるこの映画のヒロインが考える死後の世界を根底から覆す内容なだけにキリスト教そのものに一石を投じたってことでも意義ある映画といえるかも。

 

2002/05/22 【 鬼が来た! 】
 2000年カンヌ映画祭グランプリ。第二次世界大戦も終ろうとしている1945年の日本軍に占領された中国の村が舞台。 突然麻袋に入れられた日本兵と通訳が村に届けられたことからはじまるストーリー。 通訳が意図的に日本兵の言葉を変えるところでは場内大爆笑。 監督の「おぞましい出来事でも人を笑わせることができる」という観点からも喜劇と悲劇が表裏一体となっています。 正視に堪えない内容だけにユーモアをもって描く手腕と主演も兼ねているチアン・ウェンという監督に脱帽。 このおじさん良いです。役柄からくる人間味もたまらなく 好きになりそう(笑)  この映画は中国国民が体験した不条理を描くだけでなく先に光が見えてこないのがやるせない。 私たちが信じている人間は結局頼りにはならないものかもしれません。 実際民族間の争い、憎しみ、悲劇は繰り返されている普遍的なものだし人間は疑ってかからなきゃならない存在なのかも・・。 悲しいワ。 モノクロ映像が壮絶なラストだけカラーになった時心にやるせない深い痛みが走りました。 もう♪軍艦マーチを聞きたくないよー。

 

2002/05/22 【 アトランティスのこころ 】
 スティーブン・キング原作の400万部を超える大ベストセラーの映画化。 主人公は幼なじみの訃報を聞いて戻った故郷のかつて住んでいた家で自分の少年時代を思い出していきます。 それは甘酸っぱい初恋であり不思議な力を持つ老人との友情だったりします。 レクター博士でお馴染みのA・ホプキンスが知的で物静かな老人役を演じています。 地味な映画ながら60年代ポップスとノスタルジックな雰囲気が心地よいです。 それにしてもこの母親なんとかならない?自分のことしか頭になくてよくこんなんで子供が素直に育つなぁ。 いい歳なんだから自分の物差しだけで人を判断することやめましょう。 ところで最近私もかつて一人暮らししていた所.に行く機会があったので昔住んでいたアパート等見て来ました。 当時一人暮らしのおばあさんが大家さんだっただけに期待してなかったけどあったのよ。 そのまんま。 山手線が通るたびに揺れた家屋です。 銭湯は姿を消し辺りはラブホテル街となっていたけどね・・・忘れ去ったかのように思えた当時の一コマ一コマが思い出され胸いっぱいになっちゃた。 全て流されていく中でちょっと立止まるってのも必要かも。しみじみ・・・

 

 

2001/12/12 【 アメリ 】
 本国フランスではNo.1ヒットとなりシラク大統領やジョスパン首相まで鑑賞し舞台となった実在するカフェ‘ドゥ・ムーラン’にはフランス全土から観光客が押し寄せ所謂‘アメリ現象’まで起きたという話題作。 実際サービスディでもない平日の映画館が満席だったことからも人気ぶりが伝わります。 冒頭「好きなこと」「嫌いなこと」を挙げ登場人物紹介をする段階で一気におフランス人が身近になりました。 妄想にふけるのが好きな一風不思議少女っぽいアメリは手の込んだいたずらで幸せを運んでくれます。 人って誰かに肩を押されたら前進する第一歩は歩み始められるものなんだけどその誰かがなかなかいないのよねー。 待っているだけじゃなくここはひとつ皆が幸せを運ぶアメリになればめでたしめでたしなのね。 ところでこの映画予想外にエロいシーンがあるんだけどこれって必要だったの?? 途中何度か 眠気でうとうとしかけたけどこの手のシーンがあると目が覚めるわね(笑)

 

 

2001/10/25 【 おいしい生活 】
 ウディ・アレン監督主演の大人のコメディー。結婚25年おんぼろアパート暮らしの夫婦がひょんなことから大金持ちになりずっと夢だった「おいしい生活」が現実になって・・・という話。体系的にも迫力ある奥さんの毒舌はかなり面白く夫婦漫才でも聞いているような気分。 片っ端手に入れて次に欲しがったのが芸術。その為には品性や教養もgetしなくちゃというわけで徹底した「ハイソ嗜好」に突進していく様がなんともいえず笑える。 おいしい生活が幸せとは限らないから自分らしく下駄を履かないで暮らしたいものです。 ボキャブラリーが豊富でなくても言葉は通じるし幸せは添加物だらけの料理にだって見出すことができるしね。 でもこれはハイソ生活したことない私が言っても説得力ないか・・・(笑) とにもかくにもこのでこぼこ夫婦最高!

 

 

2001/9/17 【 ウォーターボーイズ 】
 シンクロと言えば女性の花形競技という固定概念とはさようなら。 ある意味女性の隙のないシンクロより楽しいし見応えありました。 この映画は埼玉県の男子校で実際行われているのにヒントを得たそうですが最近この手のアイディア(女なのに相撲・ボクサー、男の子なのにバレエetc・・・)映画続きますね。  青春をシンクロに捧げようという意気込みがさらさらなく成り行きでっていうのが現代っぽい。 ただ昔見たことのあるTVの青春ドラマの登場人物みたいで今どきあんな高校生いるの???というくらい幼くて概して類型の域を出ていないようなのが演技力不足と共に気になりましたが脇を固める柄本明、竹中直人らが超個性的なのでカバーされているような。♪ダイヤモンドヘッドから始まってラストの♪学園天国まで選曲が良いし爽快感は保証です。 あっ意表をついた青江三奈の伊勢佐木町ブルースが効果的でした。

 

 

2001/6/28 【 A.I.
 一昨年亡くなったキューブリック監督のビジョンをスピルバーグが継いだ話題作。 人間がロボットと共存する未来世界版での「ピノキオ」。 身勝手で移ろい易い人間の都合でインプットされたロボットの悲しさにやるせなくて泣きどころはあるけれど このテーマは「アンドリューNDR14」でも既に投げ掛けていたような・・加えてラストに出て来る未来人?はどっかの映画でも見たことあるような・・・ってことでは公開までの厳戒体制で期待させられすぎの感も否めません。 そうは言っても CG効果も加わった未来都市の演出は小物ひとつとってもうなるほど楽しめました。  人間って純粋な一途な愛を受ける価値が果たしてあるのかな・・?

 

 

2001/4/10 【 あの頃ペニーレインと 】
 アカデミーでオリジナル脚本賞受賞。 15歳にして「ローリングストーン誌」のライターになった少年が同行したバンドのツアーを通じたロックの世界。 自称「バンドエイド」のペニーレインがめちゃ可愛いけどグルーピーとは違うっていうの分かんなーい。やってること同じじゃん。 使い捨てにされて傷つくまで夢を見続けるのは若い証拠かな。 懐かしい70年代ロックは嬉しいしおっかけファン心理もわかるし主人公は好感持てるけど ペニーレインを虜にしている人気ナンバー1ギタリストを筆頭にこのバンドが感情移入できるほど素敵に思えないのが残念。 実際の演奏シーンにものれなかった。 ドラッグ、女、酒、金に溺れての成功ならそれでいいじゃない。 少年を踏みにじって体裁を整えようとした段階でロックじゃないわ。

 

2001/02/12 【 アンブレイカブル 】
 死者131名の脱線事故でかすり傷負わない唯一の生存者への謎を唱え “この結末は誰にも明かしてはならない” “真実を知る勇気があるか” で恐怖心をあおる宣伝でしたが「シックス・センス」の時ほどの衝撃度がなかったのはどうしても二番煎じの感があるせいでしょうか。 ヒーローも悪者あってこそ誕生するし光と闇・白と黒・正義と悪は表裏一体ってことはわかったのですがアタシ頭の回転鈍くて肝心なことが理解できません。 で、何でBウィルスはアンブレイカブルな人だったの???一番知りたいんだけど・・・  “全てのシーンに理由がある” という伏線をはる物事を逆さまにとらえる凝ったカメラアングルは細かいところまで考えられていましたが 不可解なのはサミュエルLジャクソンのヘアスタイルなのよね。 はっきり言って変。 あの意味は何かしら・・・

 

 

2000/12/14 【 オーロラの彼方へ 】
オーロラは私も1度だけ飛行機の窓から見た事がありますが神秘的でいかにも不思議なことが起こりそうなのよね。 たまたま古い無線機で話をした相手が死んだはずの父だったら・・・出会えるはずのない親子が時空を超えて語り合う・・・未来の息子と最悪の過去を変えていくというあり得ない話 ですが身内を亡くした経験がある方なら感情移入できるかも。 過去の1部を変えることで未来も変わってしまう為 先が読めないストーリーはサスペンスの要素もあります。 恐山のイタコさんも真っ青の死者との対話なんだけど心が暖かくなりました。 親子って良いもんだわ・・・

 

 

2000/11/05 【 アンジェラの灰 】
 ピューリッツァー賞受賞の大ベストセラーの映画化とあって案の定満席でした。  愛や信仰だけでは解決できないものがあるとみるか or 不遇すぎる境遇の中でも愛と夢があれば生きていけると観るかは意見がわかれそう。 家族を愛しているのに行動がかみあわない情けない父親を責めることはできない程惨めな現実。 俗にいう“幸せはお金じゃないわ”は、最低限の生活ができてこそ言えるのかも。 アイルランドの容赦のない雨はこの一家の暮らしを物語っているようです。 タイトルがピンとくるようになる為にもその後のエピソードがあるという続編を望みます。 全編を通さないと何とも言い難いわ。 要所に流れるビリーホリディーの歌声は心に染みます。 

 

 

2000/9/21 【 Xーメン 】
 何の予備知識もなくタイトルだけ聞いた時「オーメン」の続編かと思いビビッタのは私だけかしら。 ホラーじゃなくてSFで本当に嬉しかったわ。 アメリカの40年続いた人気コミックが原作だそうですが馴染みのない私でも充分楽しめました。 憧れの試写会でストーリーも俳優もジャンルもわからないまっさらな状態での鑑賞というのも良いですね。 生まれつき超能力を身に付けたミュータント同士の壮絶バトル。 この超能力が奇想天外というか奇抜イエ斬新で驚き。 主演のヒュージャクマンのもみ上げがまるでルパン3世のよう。 ともかくこのミュータントの黒いおそろいのコスチュームがカッコイイ。 特に女性ミュータントはマネキン並みのまさに人間バービー人形。 元スーパーモデルや元準ミスアメリカの威力とはたいしたものです。 結局「男はつらいよ寅次郎」ならず「超能力者はつらいよ」ってことよね。 これ絶対続編ありのラストでしたから楽しみだわぁ。

 

 

2000/6/02 【 インサイダー 】
 久々に重い社会派ドラマを観て大満足。「CBS」「60minutes」「B&W」「フィリップモリス」etc・・と実名がばんばん出てきます。 これは実話で上映前にもたばこ会社から圧力がかかったそうです。 これまで築いてきたものや生活の保証を代償にしてまで真実を語り進んで行くことのできる人はそうはいません。  こうして映画化された今は告発人から去って行った人々も彼の勇気と強さを誇りにしていることでしょう。 驚いたのはラッセル・クロウの体型。それもそのはずこの役作りの為に20kg体重を増やしたそうです。 体型はどうであれアルパチーノといい正義を貫く姿は最高にカッコイイ!



2000/6/02 【 エニイ・ギブン・サンディ 】
 オリバーストーン監督作品。 ストーリーは単純で辟易する予想通りの筋書きなんだけどゲームのど派手な演出でよくルールを分からないまでも一気に観れました。  金八先生も山下慎二も真っ青のアル・パチーノの熱弁には圧倒されちゃう。 アメフトって日本ではマイナーなのは何故? 元アメフト部っていう人知っているけど命取りになる怪我も恐れずやっていたと思うと今更ながら感心しちゃいます。 タフだものモテモテなのも肯けるわ。 「勝つにせよ負けるにせよ人間らしくできるかだ」の言葉が胸に突き刺さります。

 

 

2000/5/14 【  アメリカン・ビューティ  】 
 アカデミー5部門受賞。 素敵な一軒家・イタリア製ソファー・大理石のカウンターキッチン・高級外車・手入れされた庭etc・・・幸せな結婚の象徴ともいえるものを手中にした妻、実情は・・・から回りする懸命さは何を求めているんでしょう。 理想に惑わされて本質を見失っているとどうなるかを教えてくれます。 
 幸せって何でしょう? 少なくても演じるものではないはず。 見栄や体裁からは幸せは生まれてこない。こんな女性にだけはなりたくないしこんな家庭もいらない。 嫉妬しなくなったら夫婦はお終いよね。 取り繕っている人々のなかで本当に幸せなのは体裁をぬぐい捨てたゲイカップルだけだったかも・・・
 私? 汚して困る高級品もないしゲタを履く人生とは縁がないし・・・ヤキモチ妬かれまくりだから幸せなんだろーな(笑)

 

 

2000/3/15 【 アメリカン・ヒストリーX 】
 上映館が遠いなぁ。でも「ブエナ・ビスタ〜」の予告編で垣間見た人種差別に切り込んだ衝撃の映像が気になってしかたなかったのよね。 「はじめて骨の折れる音をきいた」だなんて生々しすぎます。白人至上主義者というとかつてのKKKと結び付きますが根深い問題だけあってこのような形で残っているんですね。全黒人への憎しみを取り除いたのは一人の黒人との触れ合いだったことからも固定観念を変えるものがあるとすればやはり心の交流でしょうか。突き刺すような兄弟家族の関係にも終始胸がつまって見終わってしばし呆然となりました。ところでエドワード・ノートンってムキムキの体だっけ。坊主頭でより強調されたような胸板には見とれちゃいますです。ここの映画館綺麗でいいのだけれど飲食一切禁止なのよね。我慢した分その夜のビールは特に美味しかったわ。

 

 

2000/ 1/15 【 エンド・オブ・デイズ 】
 DOLBY DIGITAL SURROUND EXのすごい音と振動の出る映画館で見てきました。
ミレニアム (千年紀)にふさわしいオカルト アクション ミステリー サスペンス 宗教 家族愛勢揃いの150億円かけた超娯楽大作です。 
 日本人にはとんと馴染みの無い神と悪魔の対決は二千年の思想に裏つけられた物でこの映画はキリスト教の知識があるとないでは受け入れ方も大違いでしょう。 オーメンとか エクソシスト系の嫌いな私でもシュワちゃんの活躍で宗旨 思想に関係なく1800円払っても まあ良いかという 映画でした。
 ただねーサタンが乗り移ったガブリエル・バーンが最初にしたことが綺麗なお姉さんの乳揉みには苦笑・・・アルパチーノの「ディアボロス」にも共通してるけどサタンってすごーくHなの? ナニは3分でOKですか?(まだ観ていない方は深く考えないでネ) 
この映画のヤマはミレニアム大晦日だから去年のうちに観たかったぁ 

 

1999/11/23  【 アナライズ・ミー 】
 遅れ馳せながら念願の「アナライズ・ミー」を観てきました。 公開前に試写会に漏れてしまったことでより関心が増していたので気持ちが急いてまだ誰も並んでいないうちに劇場に到着しました。 全米興収ランキングでは10週連続TOP10入りで1臆ドルを突破するという快挙の話題作のわりには館内は4割程度の入りで肩透かしでした。 でも悪名高い泣き虫のマフィアのボスと気弱な精神科医という奇想天外な設定だけでも笑いの要素はたっぷり。 「ゴット・ファーザー」「アンタッチャブル」で恐持てのマフィアのボスを演じてきたデ・ニーロが脳裏に染みついているからこそ余計に可笑しいというキャスティングの素晴らしさ。 デ・ニーロの出演があればこそ成し得た作品と言えると思います。 あのデ・ニーロが可愛いらしく思えたことが収穫です。

 

  

1999/ 8/11  【 アイズ・ワイド・シャット 】
 スタンリー・キューブリックの遺作アイズ ワイド シャットを観てきました。 批評はいろいろ 分れているようですね。R指定と言う事で その方面を期待して行くと チョット不満かもしれません。 ストーリーは キューブリックの作品にしては 珍しく難解ではありませんがその分意外でした。(実は昔 時計仕掛けのオレンジ を観て頭を抱えた経験アリなので・・・) お屋敷の仮面乱交パーティーのシーンのおどろおどろしさが唯一の見ものかもしれません。何故にあれほどまでというと非日常を強調することで罪悪感などを高める効果を出しているのでしょう。 でも 昨今軽いノリで何でもアリの方々も少なくはないでしょうから白けちゃったっていう方もいるのでは?  客層は予想通りカップルがほとんどで単独のお客さんは目立つほど。 私てきには 初めて入った劇場でいつもの所と勝手が違いソフトドリンクONLYで ビール飲みながら観賞できなかったことが残念でした。  あ〜夢と現実はあいまいだってことなのね・・・



2005/10/4  【 海辺のレストラン ガスパール&ロバンソン 】

例外的にビデオの感想です。1990年制作のフランス映画。20005年の私の誕生日プレゼントとして長女へリクエストした作品。残念なことにDVDにはなっていなくビデオを購入してもらいました。ハリウッド映画とは時間の流れかたが違うのでフランス映画が苦手な方にはおすすめはできないのですが好きな作品です。昔、レンタルショップでおいしそうなタイトルの映画を片っ端レンタルした中で出会った作品。南仏プロヴァンスの静かな海辺にレストランを開くことを夢みている二人の男と捨てられたおばあちゃんのストーリーです。浜辺で椅子を並べてレストランで使えそうなものをチェックしたりカラフルにペイントしたりなんだかとっても目に優しいシーンが印象的。家族に捨てられたおばあちゃんのキュートさと、妻に去られたガスパールの優しさと、母に忘れられたロバンソンの無邪気さに余韻が残ります。美しい南仏の太陽と海が優しい。




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