MOVIE      2006年映画館で観た感想

 

硫黄島からの手紙
明日へのチケット
マッチポイント

007 カジノロワイヤル
椿山課長の七日間
父親たちの星条旗
手紙
サンキュー・スモーキング
カポーティ
太陽
キンキーブーツ
フラ・ガール
7月24日通りのクリスマス

トンマッコルへようこそ
ゆれる

ブラック・ダリア
地下鉄に乗って
13歳の夏に僕は生まれた


胡同のひまわり
イルマーレ
うつせみ
プルートで朝食を
ヨコハマメリー
UDON
母たちの村
家の鍵
かもめ食堂
ゲド戦記
日本沈没
間宮兄弟
白バラの祈り
ダ・ヴィンチ・コード
嫌われ松子の一生
スタンドアップ
ホテル・ルワンダ
クラッシュ

僕が9歳だったころ
僕のニューヨークライフ
タイフーン
プロデューサーズ
ブロークバック・マウンテン
RIZE
風の前奏曲
疾走
真夜中のピアニスト
ある子供
乱歩地獄
単騎、千里を走る。
ミュンヘン
博士の愛した数式

ヴェニスの商人
THE有頂天ホテル
親切なクムジャさん
男たちの大和/YAMATO


2006/12/30 【 硫黄島からの手紙 】

クリント・イーストウッドによる続く硫黄島の第2弾の「硫黄島からの手紙」を観た。
アメリカが5日で落ちるとされた硫黄島戦を、日本軍側の視点から描いた硫黄島陥落までの36日間の戦闘を描いた作品。

なんと21,000人のうち、生還したのはわずか1,000人だったという先に「父親からの星条旗」を観ていたので余計に心頭できた。日本人でさえほとんど知らないこの題材をこうやって公にしたイーストウッド監督に畏れ入るばかり。

陸軍中尉、元馬術競技金メダリスト、パン職人、元憲兵、そしてアメリカ人の兵士も家族への思いは皆同じ。手紙を前にする時だけは皆同じ顔。なのに何故こーいった状況になっているのか・・・。

一緒に観たムスメが印象的だと言ったのが、栗林中将の「家族の為に死ぬことを決意したのに、その家族を思うと死ぬことが出来ない。」という台詞。確かに・・・戦場では家族を守るためだと自分の死を納得している葛藤が伝わってくる。それにしてもあの状況での栗林中将の人間性には感服するばかり。そしてやはり正しい人として描かれる元オリンピック乗馬選手も死に様は生き様そのもの。栗林中将の奇策に逆らった中尉の皮肉な末路を見ても「生きたように死ぬ」という言葉を実感した。

「天皇陛下万歳!」「靖国で会おう」の重さを感じるとともにこの台詞の作品は日本では撮れなかったかなと再度クリントイーストウッドに敬服。





2006/12/23 【 明日へのチケット 】

ローマへと向かう列車を舞台に、3人のカンヌ国際映画祭のパルムド−ルの受賞監督が3つのエピソードを作った。

1話はイタリアのエルマンノ・オルミ監督が淡い恋をした老教授を、2話はイランのキアロスタミ監督が救いの無い傍若無人なオバタリアンを、3話はイギリスのケン・ローチ監督でサッカーサポーターの少年達を描いている。これらの話がそれぞれ全く独立しているのではなくを中心に3話ともアルバニア難民を絡めて描いている。
この監督の顔ぶれはかなり贅沢だというが私はこの監督の作品は知らない(-_-;)。1話と2話は特別ストーリーに山があるわけでもなく淡々としているのがある意味退屈にも思えた。3話目のサッカー少年の葛藤は意外な展開で楽しめ、この列車を降りてからのこのアルバニア難民を見つめる少年達の表情がとても良かった。ストーリーごとの別々の車両の為、イタリアの列車の車内の様子は興味深かった。





2006/12/22 【 マッチポイント 】
ウディ・アレンがニューヨークからロンドンに移っての第一作のラブサスペンス「マッチポイント」を観た。
ゴールデングローブで四部門、アカデミーでは脚本賞でノミネートされている。
ウディ・アレンが登場しないので今回はあのマシンガントークが聞こえないのとイギリスの上流階級を描いているだけあって音楽もウディ・アレンらしいジャズから今回はオペラになっているのが特徴。
タイトルのマッチ・ポイントにはテニスでボールがネットに当たってどっちに落ちるかは「運」という伏線が込められている。アイルランド生まれとアメリカ生まれの2人の運をめぐる対比を軸に、‘身勝手男’の絵に描いたような展開はまるで3面記事そのものながらウディ・アレンらしいのはラスト。「努力」より「運」と言いながらも、後半ボールの代わりの指輪が橋の欄干に跳ねた時に予測したものとは違っていたのも「運」の持つ不確かさを表し、ある意味最後までテーマである「運」を皮肉っている。




2006/12/15 【  】

韓国映画「弓」を観た。

弓は弓矢であり楽器であり老人の生き方そのもの。10年間も船上だけで暮らす少女と老人の物語。

メインの2人に台詞がないことと、幻というか霊的なものとの愛の成就という2点が前作の「うつせみ」と通じる。これが鬼才といわれるキム・ギドク監督の世界なのか。思いもよらない世界観を映し出すだけに先が読めなくことごとく意外な展開。この老人のエゴも少女の選択も全く理解の範疇を超えている。因みに「うつせみ」は酔えたけれど今回はあまりにセンセーショナル過ぎてついていけなかった。露出は少ないながらこれってR指定にならないのが不思議。

この監督は敬虔なクリスチャンだそうだ。もしこの映画の‘その後’があるならもしかしたら「処女懐胎」を描いていたかもしれない。





2006/12/10 【 007 カジノロワイヤル 】

現代を舞台にしながら、ジェームズ・ボンドが007になるまでの話を絡め、これまでのボンド像を作り上げた、‘ルーツ’とも言える物語。

近年007シリーズが面白くなくなったのは一体何作目からだったろう。ピアース・ブロスナンにいたってはあまりにボンド役とイメージがそぐわなくて観ようとも思えなかった。が、6代目となる今度のダニエル・クレイグは良い。007ってこ〜んなに面白かったっけという感想。ボンドが初めて人を殺すシーンや本気での恋愛をみせてくれる。人に歴史あり。冒頭のアクションシーンは高所恐怖症気味の身には本当に心臓バクバクでものすごい迫力。次々各国でのシーンはまるで旅行気分だしカジノの心理描写は目が離せなく全編楽しめる。ボンド流マティーニの「ジン3+ウォッカ1+キメイ・リレ1/2+薄切りレモンの皮」は是非試してみたい。

ただヒロイン役のエヴァ・グリーンだけはかな〜り不満。この女優さんが着飾るのに比例する化粧の濃さには辟易。他の映画同様今回もしかり・・・(-_-;)。化粧落ちたシャワーのシーンの顔の方がよっぽど良い。ってことで次回以降のボンドガールに期待。





2006/12/05 【 椿山課長の七日間 】

椿山課長の七日間を観た。

「いつか死ぬ予定のある方は参考まで是非ともご覧下さい」というサブタイトル。主要な三人は所謂死ぬに死ねない状況で現世に心残して死んだという人々。じんわり死に近づく人もいればいきなりという場合もあるから、また現世戻ってみたいという気持ちはすごくわかる。天国の案内人が言うように、戻った場合良いことばかりではないということも・・・。でも観終わってどうもしっくりこなかった。嫌なこともあった分良いこともあった だから まっ良いか みたいなまとめ方も?だし、たまたま選ばれた3人がご都合主義にうまく絡み合ってのハッピーエンドもどうなんでしょう。

だいたいこの椿山課長の奥さん像がつかめなかったのが気持ち悪い。なんなんだろうこの人は・・・。旦那の死を悲しんでいる風でもなく良心の呵責に悩んでいる風でもない。なんか不気味でコワイ。

西田敏行が被さって補っているから助けられているものの主演の伊藤美咲は「海猫」もまさにそうだったように美人というだけで力不足で残念。

たまたま一緒に映画館を出た初老の紳士に「原作読まれましたか?浅田次郎は良いですね。あっ突然話しかけてすいません。大変失礼しました」と話かけられた。なんて丁寧な方なんだろー ちょっと嬉しかった(^^)





2006/12/1 【 父親たちの星条旗 】

ジェイムズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ著のベストセラー「硫黄島の星条旗」原作でクリント・イーストウッド監督。製作にはスピルバーグの名前もある。

それにしても硫黄島が日本ではあまり知られていないことを実感。日本の約23千名に対し25万の兵力で米軍がB29に護衛戦闘機をつける為など日本本土爆撃の効果をあげる為に足がかりとして硫黄島を奪取にかかったという。

これはアメリカサイドからの作品にもかかわらずお金(国債)の為英雄を仕立てる社会や星条旗を利用しようとする政治家など、アメリカには戦争を必要とする政治機構があるということを描いている点がすごい。

結局お金でも名誉でもなく戦った兵士は、ある者は命を落とし、残った者は自分の意思とは関係なく国に利用されていく。真実を語れないことや英雄とされてしまったことの苦悩や、兵士達のその後の人生を通して戦争がいかに個人の人生を狂わせていくか伝えている。冒頭の「戦争に行った人は戦争について語りたがらない」という言葉に重みを感じる。これは日本サイドからの「硫黄島からの手紙」が楽しみ。PS硫黄島って英語でも「イオウ アイランド」ではなく「イオウジマ」でした〜。





2006/11/25 【 手紙 】
原作は東野圭吾。無期懲役の犯罪者の兄とそのたった一人の家族の弟を軸に、被害者の身内、そして周囲のそれぞれの立場の苦悩を描き、どう生きていったらいいのかを圧倒的な迫力で問いかけている。
兄にとっての手紙は唯一の希望であり、また般若心経だったのに対して、弟にとっての手紙は途中から重荷にしかならなかった。
犯罪者の家族というだけでこれでもかと不条理な差罰を受け続けることは現実にあることと思うとやりきれない。何度目かの職場の会長の「差別は当たり前。差別のあるこの場所で1から始めて生き抜きなさい」という台詞が突き刺さった。
タイトルに沿うように弟と獄中の兄、妻と獄中の夫、施設の娘と父、匿名と会長、主人公を想う女性と主人公の兄etc色々な手紙のエピソードがつまっている。
手紙を読み書きするシーンがほとんどながら兄の玉山鉄ニの演技は凄い!特に最後は迫真で圧巻。お笑い芸人を夢見る主人公の山田孝之も体当たりで良かった。マシンガンズが監修したという芸はプロ並でとっても楽しめた。そして、泣いた。
小田和正の♪言葉にできないを聞きながら 言葉にできないほど胸がいっぱいになった。




2006/11/24 【 サンキュー・スモーキング 】
日比谷シャンテ・シネで「サンキュー・スモーキング」を観た。
愛煙家には住み難い時代になり、たばこ関係の訴訟も多いアメリカでシニカルと支持されているという作品。
オープニングに色々なたばこのパッケージが次々使われて興味深い。
たばこ関係のロビイスト(広告マン)対最強の嫌煙家軍団(癌患者、医療関係、議員etc)という構図を見ても最初から結果は見えていると思いきや、まぁびっくりするような主人公の弁。鍛え上げられたディベートのプロというものを見せ付けられたよう。
週一回のたばこ、アルコール、銃のロビイストが集まる会合(死の商人merchant of deathの頭文字をとってモッズ特攻体)は笑えた。後に加わる軍需産業やファーストフードも高カロリーのチーズも総じて売る人間やPRする人間が悪いのではない。
要は禁止するのではなく自分で選択する自由を持とうということ。
父子の関係も描きながら子どもに対しても決め付けるのではなく考えろというメッセージを織り込んでいる。
けっこう全体的にドタバタ感があって笑えた。「仕事はローンのため」って台詞が一番説得力あった。
が、が、「太陽」「カポーティ」に続きまたしても途中うとうと・・・。微熱ある中での鑑賞が災いしたみたい。




2006/11/24 【 カポーティ 】

日比谷シャンテ・シネで「カポーティ」を観た。

2006年アカデミー賞でフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞受賞作品。

ソックリと言っても実物のカポーティを知らないし「冷血」も読んでいないので、観るまでかなり不安だったけれど、あまりそれは関係なかった。

ただし、カポーティの絶え間ないトークが子守唄になったのか、「太陽」に続きまたしても寝てしまった。
天才というのはやはりなんとかと紙一重という言葉があるように、なんだろーこの人の持つ性格の不気味さは・・・。いくら相手が殺人犯だとしても小説を書き上げるためにここまで別人格になりきれるものか。この人には良心というものが無いのだろうか。主人公の「犯人と自分は同じ家(環境)で育ったけれど、自分は表から出て行き、彼は裏口から出て行った」という台詞が印象的。
犯人からの話を元に書き上げた本のタイトルの「冷血」はそのままカポーティを表している。
後半、「助けられなかった」と感傷的になっている主人公に、同僚ネルが「あなたは助ける気なんてなかった」と返す台詞が良い。この会話がどう本人につきささったかは定かではないながら、何かが欠落したエゴな面とやっと良心の呵責を感じたカポーティの複数の角度からの人間性が描かれていて見応えあった。





2006/11/23 【 太陽 】

地下商店街の一角にある今時珍しいレトロというより場末っぽい映画館のシネ・パトスでロシア映画「太陽」を観た。ここでしか上映しないという理由で前回来たのは、確かデニーロの「フローレス」なのでなんと6年ぶり。

昭和天皇を描いているという内容の繊細さから日本での上映は難しいと言われていたとか。なかなか評判も良いようなので期待していたのですが、退屈な日常をこれでもかというくらい淡々に描いていて始まって間もなく寝てしまった。目が覚めてからも近くでスースー寝息が聞こえたので眠くなるのは私だけではないみたい。

昭和天皇を演じたイッセー尾形はとても似ていて良かった。

発音などにここまでこだわったのが監督の意向だとしたらすごい。

米人の写真撮影に応じた天皇が、チャップリンに似ていると言われながらポーズを取ったり、口癖?の「あっ、そう」をユーモア交えて描いたり、神とされてきた天皇がどのように「人間宣言」に行き着いたのか日本人じゃないから映画化できたのかもしれない。そう考えると観る価値があるかもしれない。





2006/11/13 【 キンキーブーツ 】

仙台のチネ・ラヴィータで「キンキーブーツ」を観た。

因みにキンキーとは@変態のA奇妙な、変わり者のという意味。ってことは直訳するとなんと「変態ブーツ」!!なんて大胆なタイトル!

「どうすれば良い?」とばかり言っていた優柔不断の靴工場の跡継ぎチャーリーとドラッグクィーンのローラが殻から抜け出すように「自分らしく生きる」ってことを見せてくれた。このローラを演じたキウェテル・イジョフォーが複雑な心境を見事に演じていて素晴らしい。

悩める男性陣?に対して婚約者も老若の従業員も含めて女性陣がなんと強いことか・・・。保守的な地方での労働者を軸に偏見もきっちり描いているのはいかにもイギリス映画。そしてドラッグクィーンを含めて美男美女が1人も出てこないのもgood

ドラッククィーンと田舎の靴工場の跡継ぎの思わぬ出会いから始まるこの話が実話に基づいているというのが驚き。

工場の従業員にはピンとこなかった かの聖地‘ミラノ’でのクライマックスとなるステージは圧巻で泣けた。良いじゃんkinkyで・・・。
変態ブーツ最高!





2006/11/5 【 フラ・ガール 】

久々に長女と一緒に映画を観ることに。で、観たのは「フラ・ガール」。
昭和ブーム真っ只中、今回も時代は昭和40年ということで、風景や家屋を見てもノスタルジック。廃坑寸前の閉鎖的な常磐炭鉱を舞台にかのハワイアンセンターができるまでの人々の絶望と苦悩と希望。
最近TVで短期間であっという間に社交ダンスを上達する芸能人をよく目にする中、今回は3ヶ月という練習期間ということでやっぱこれが芸能人なのか・・・。圧巻のダンスをたっぷり見せてくれるのも嬉しい。
煤けた炭鉱町の中、松雪泰子の赤・青・緑・白という鮮やかなファッションがなんとも映える。特筆したいのは違和感ないどころか存在感のあった南海キャンディーズのしずちゃん。ほわわぁ〜んとしたキャラできっちり見せ場を作ってくれた。
そういえば実家の自分の部屋には親が社内旅行で行ったお土産のフラガールの置物があったっけ。それを考えても当時のハワイアンの一代ムーブメントは計り知れない。
サクセス映画にありがちなベタというかステレオタイプな作品ながらもじ〜〜んとなった。





2006/11/5 【 7月24日通りのクリスマス 】

予定していなかったものの「フラ・ガール」までの時間に間に合いそうということで急に観ることになったのが「724日通りのクリスマス」。
電車男でエルメスを演じた中谷美紀による女版「電車男」ということで気になっていた作品。
素が素なのでダサイとまでは言えず構わないというか磨いていないだけですがあのエルメスがイケテない・・・。そしてMOTE(モテ)服を身に付け華麗なる変身!!地味な色合いから真っ白い服へというのも効果倍増で気合いの入った中谷美紀はエルメスを彷彿させる以上にキラキラ。
と私はまさに「電車男」とダブらせていたのですが、長女は妄想好きなヒロインを「アメリ」と重ねて観ていたそうです。なるほど・・・。
クリスマスに王子様と結ばれるっていう発想はまさに漫画チックで恋に恋する夢見る乙女そのもの。甘〜〜〜い!

教会のシーンにアレ??ということもあり無理な展開が残念だったものの、現実となると乗り越えなきゃいけない山で押しつぶされそう。そんなヒロインに一喜一憂しながら、エールを送りました。脇役陣はクスクスッと笑え、佐藤隆太のパラパラ絵には胸がつまった。
長崎と交差するリスボンの街並みも素敵で「724日通り」に是非行ってみたい。BGMALLクリスマスソングの王道♪
メリークリスマス!!





2006/10/28 【 トンマッコルへようこそ 】

2005年韓国での代表作、国民の6人に1人が見るNo.1ヒットとなった「トンマッコルへようこそ」を観ました。

トンマッコルとは、「子どものように純粋な村」という意味の架空の村名。

音楽が久石譲だしイノシシも登場(もののけ)ということで宮崎アニメ実写っぽい雰囲気のある作品。最近シブリ映画(ハウル・ゲド)が面白くなかっただけにそっちと比較しても楽しめました。

少女はともかく村人の無垢さが度を越していてちょっと引いてしまった部分もありましたが、連合軍の米兵・韓国軍・人民軍という三様の立場を超えた関係と、「トンマッコル」という平和なユートピアと現実の戦争のギャップが戦争の罪の大きさをうまく表しています。

韓国映画ってどうしても北との関係が絡んでくるので、「別の場所で出会っていれば仲良くなれたかも」というどこかで聞いたような台詞をはじめどこかで観たようなというシーンという感じはありましたが、それでも同一民族が戦う悲しさがあふれていました。ふと思いつきで出た台詞の「南北連合軍」という言葉はなんとも重い。

そういえばボスニア兵とセルビア兵の「ノー・マンズ・ランド」でも同じような意味あいから反戦を描いていたように、このテーマは何度観ても見飽きることがなく悲しくやりきれない。

ラストの兵士の表情が素晴らしい。あれを観れただけでもちょっとだけ救われたような・・・。





2006/10/26 【 ゆれる 】

ゆれる」を観ました。完成度の高さに圧倒され観終わってすぐに席を立てない程。
小さな町で家業を継いだ実直に生きる兄と東京で成功し自由奔放に生きる弟というこの対照的な2人の心の奥底に眠る羨望や嫉妬や罪悪感などの葛藤を軸に展開していく。鍵となる兄が背中を向け洗濯物をたたんでいるシーンも含めて香川照之はただただ圧巻。
この「ゆれる」というタイトルが作品全てを表している。洗面台の水、つり橋、川面、暗室の水、つり橋、ゆれる記憶、ゆれる兄弟の絆・・・。事件なのか事故なのか何が真実なのか最後まで観客の感情をゆらし、7年もの歳月を経た後に弟が見えたものとは。そして兄が見せたのあの表情は何を意味しあの後どうなったのか観客に判断をゆだねたまま終わるラスト・・・。
今回映画サークルのメンバーと一緒に鑑賞したら、なんと意外にも好き嫌いがはっきり分かれた。評価もゆれる ってことでしょうか。





2006/10/25 【 ブラック・ダリア 】

1947年に実際に起きた「ブラックダリア」と呼ばれている猟奇殺人事件をモチーフに作家ジェームズ.エルロイが小説化したのものを、ブライアン..パルマ監督が映画化。
1940年代という時代背景の中、全体的に抑えた色彩の渋さや、生前のブラック・ダリアを映すモノクロのビデオ映像は渋くてなかなか良い。
が、世界一有名な死体ということで期待させておいて、何故被害者がブラック・ダリアと呼ばれたかの描き方があまりにあっさりし過ぎ。
2人の刑事ファイアーとアイスの名前(ブランチャードとブライカード)が似ていて混乱+ニックネームでの呼び方も加わって更に混乱。ヒラリースワンク演じる令嬢マデリンが被害者とそっくりと何度も台詞に出てくる割に全く似ていない。当時の時代背景のひとつなのかどうか地震のシーンの意味は?最後は犯人(共犯者)自らの口によるネタ証し・・・。う〜〜〜〜ん(-_-;) 





2006/10/22 【 地下鉄(メトロ)に乗って 】

1995年吉川英冶文学新人賞受賞作の浅田次郎原作の「地下鉄(メトロ)に乗って」を観ました。
なぜ10年以上経って映画化なのか・・・やはり昭和ブームも関係しているのでしょうか?昭和といえば堤真一が「ALWAYS3丁目の夕日」に続き登場。

最初の東京オリンピックの昭和39年へのタイムスリップから始まって闇市の21年そして戦時中が当時の父の姿と共に描かれています。
サブタイトルに「それはあなたの知らない、あなたの物語」とあるようにさて自分の親のことをどれだけ知っているでしょう。若かりし頃の親と出会ったら・・・なんとも興味深い内容。

誰より存在感あったのは先生役の田中泯。この強烈な存在感には総じて高評価されている他の出演者もかすむ程。ヒロインの岡本綾は役どころがあまりにタイムリーな実生活のスキャンダルと被ってなんとも残念。
全体的にはまさに浅田次郎ワールドで原作の空気感がそのまま出ていたようですが、矛盾したシーンもいくつか。ヒロインの両親の会話からヒロインが実際に体験した幼少期の寂しさがつながらないし、ザ・サラリーマンという堤真一の姿は当時の父親にとってインパクトあったにもかかわらず「あっどこかで会ったような・・・」がなかったこと。そしてあのラストがあってこその物語といえど展開がちょっと唐突だったような。





2006/10/9 【 13歳の夏に僕は生まれた 】

伊映画「13歳の夏に僕は生まれた」を観ました。
オープニングが♪ルビーズ・アームズ by TomWaits で、エンドロールには落ち着いたピアノの音色。どちらも作品を表していて良い。

少年を表現するものが裕福な実業家の家、クルーザー、バイク、そして周囲からの深い愛情で、対する不法移民の兄妹?を表現するものは、ぼろぼろの密航船、腐った果実、一杯の水、収容所、そして誰も信じないこと。

キーワードの「生まれたからには、もう逃げも隠れもできない」というアフリカの言葉に生きていかなくてはいけないという想像を超えた重い叫びが感じられるよう。

純粋、無垢、無邪気な善意が通用しない現実と無力さを知ることが大人の階段を昇るということに通じていくのはやり切れなさ過ぎて、その少年の気持ちをそのまま表しているようなエンディングが秀悦。

唯一この分かり易いようでいて冴えないっていうかダサイ邦題だけは残念。(原題はOnce you’re born





2006/9/30 【 胡同のひまわり 】

胡同(フートン)のひまわり」を観ました。「こころの湯」のチャン・ヤン監督作品とうことで期待大。

今回も「こころの湯」とリンクするように近代化の影で失われゆく古き良き中国の側面が描かれています。父子の愛と衝突を軸に文化大革命をはさみ毛沢東の死や四人組の粛清などを絡めた30年。
近代化の象徴が高層アパートなら、無くなっていく運命は四合院(北京の代表的民家)の建物。驚くことにセットだということですが、この民家の生活感を見れただけでも感動ものというぐらい良かった。入り組んだ路地のあちこちから監督の変わりゆく中国への想いが伝わってきます。胡同の街並みが打ち壊されていく中でこれでもかと描かれているのは、ダンスや運動で健康を維持しようというお年寄りの姿。これも近代中国の一面として丁寧に描いています。
子供にとって良かれと思ってとはいえ厳格で過干渉な父親は度を越えちゃっているけれど頑固一徹の父親を演じたスン・ハイインは見応えありました。
この映画は好みの中国ヒューマンドラマなのでツボを押させているのですが、不満は先に観た予告編。「30年経って、僕は初めて父の隠された思いを知った」なーんていうから一体どんなすごい秘密が隠されているのかと楽しみにしていたのに・・・秘密ってそれ?という感。しかも息子の奥さんの退院の日の映像まで予告編で流しているし・・・。あそこを予告編で流す意図が全くわからない。本編は良かったケド予告編の過剰ナレーションとサービスシーンが残念。





2006/9/26 【 イルマーレ 】

韓国映画で大ヒットした作品をハリウッドでのリメイク版。イルマーレは「海」という意味。
オリジナルでは文字通り海に浮かぶ家でしたが、こちらは原題Lake Houseとあるように湖のほとりの家。今回イルマーレは鍵となるレストランの名前で出てきます。主人公の年齢がオリジナルよりぐっと上がっいるのも原因か全体的に大人っぽくなっているような。彼と父親、彼女と母親という親子関係を描く上での台詞などは良かった。
2004年に生きる彼と2006年に生きる彼女の設定自体に辻褄を合わせるのが難しいので敢えて触れませんが、この発想も展開も別に面白いとも思えなかった。まっ時空警察がいたら間違いなく許されない内容でしょう・・・。
文句なく良かったと言えるのは出会った日とエンディングに流れた♪This Never Happened Before _by Paul McCartneyでした。





2006/9/20 【 うつせみ 】

韓国映画「うつせみ」をレンタルにて鑑賞。

上映していたのに劇場に足を運ばなかったのはただただ、この地味〜なタイトルのせい。「うつせみ」とは蝉の抜け殻の事らしく、確かにヒロインをまさに象徴するけれど考え過ぎのような・・・。韓国題は「空き家」英語タイトルは「3-iron」ですが、断然邦題より良い!ということで邦題は??ですが、作品は凄い!!

こんな不思議な恋愛映画観たことない。

映像が美しい。そしてこの2人がほとんど語らない。主役はなんと一言も喋らない。良い映画に言葉は不要ということか、或いは恋愛に言葉は不要ということか・・・目からうろこ。

映画紹介に「監督のキム・ギドクは敬虔なクリスチャンだと知っておいたほうがいいかもしれない」とあった。ということは、青年の姿を借りたというメッセージがあると考えると尚更奥深い。体重計のメモリにこの映画の真骨頂が隠されているのかも。





2006/9/15 【 プルートで朝食を 】

ニール・ジョーダンの最新作「プルートで朝食を」を観ました。IRA問題が絡んでいる点や型にはまらない哀しい性を持った主人公の登場は「クライング・ゲーム」とリンクします。とある映画評に「英国版嫌われ松子の一生」ってありました。ヒロイン(ファッションすごく可愛いからヒロインと呼ばせていただきます)は、次々と困難と辛い経験をしているのに悲惨さが感じられないのはまさに松子と一緒で、何があっても自分らしく生きるヒロインは魅力的。
小説のように第1章〜36章に分かれていて、ベルボトムにロンドンブーツにグラムロックという1970年という時代背景が興味深かった。
そして何よりミスター・ダンディズムと呼ばれるブライアン・フェリーの出演が嬉しい。その昔Roxy Musicのコンサートに行ったら見事にヒット中の♪more than thisを演ってくれなかった(-_-;)のが今でも忘れられない(へそまがりっ)。すっかりおじさんでしたが怪しさが妙に納得。
でも全体的には長く感じ、あまり感情移入できず母親探しも中途半端だったような。
ところで「プルート」って冥王星のこと。そういえば折りしも今夏8月の国際天文学連合の総会で、冥王星は1930年以来維持してきた惑星の座を失い、惑星でない矮惑星に位置づけられたばかりなのも記憶に新しい。

この作品は「コマドリ」が要所で登場するのですが、劇場では「秋田版コマドリ」が飛びまわっていました。この話は次回に・・・。





2006/9/2 【 ヨコハマメリー 】
これは戦後50年横浜にいた伝説の娼婦のメリーさんを追ったドキュメンタリー映画です。
メリーさんが横浜から消えたのが1995年ということ。ということは一度だけ見かけたのは一体何年前のことか・・・。
関内駅の伊勢佐木町側ってなんか空気が違うせいか、映画館に行くときくらいしか足を踏み入れなかった。多分映画までの時間つぶしでふらふらしている時に、見かけたのが白い老婆。。ハマっこなら知っているらしいけど横浜生まれじゃない私はその人が有名なメリーさんとは知る由もなく、ぎょっとしてなんというか見てはいけないやばいものを見たという感じでした。それが何年も経ってこの映画で謎が解けていくとは・・・。感慨深い。
UDON
も地元出身の監督でしたが、この映画も横浜生まれの監督。街に対する愛情あればこその作品でしょう。
かつて横浜の風景の一部になっていたメリーさんをこうして映像に残してくれることで新たに見えてきたのが「伊勢佐木町」という街。ここって黄金町とか日の出町に通じるなんというか裏横浜の入り口みたいな感がありますが、メリーさんを人間として街の一部としてしまえるハマっこ気質が素晴らしい。
♪伊勢佐木町ブルース♪by渚ようこが このディープな街にぴったり(オリジナルの青江三奈のも聞きたくなりました)。そしてラストの素のメリーさんのシーンには胸が熱くなった。2004年にメリーさんを支え続けたシャンソン歌手永登元次郎氏、そして立て続けの昨年2005年に84歳で亡くなったメリーさんにご冥福を祈りたい。まさに「人に歴史あり」という作品でした




2006/8/30 【 UDON 】
讃岐うどんをテーマにした「UDON」を観ました。
本広監督の郷土愛がぎっしり込められているだけに香川の地元には何より嬉しい作品でしょう。県民栄誉賞モノかもしれません。
9割実話ということで、実際のおみせの方々の表情はのどかな風景とマッチしてとっても良いスパイスになっています。が、フジTV「特ダネ」でもしきりと褒めまくり+PRしていましたが、本編でも似たような場面が・・・なんかフジTV色出し過ぎかも。
全体的には「ノビきったうどん」という感じ。なんかくどい。これでもかというブームをたたみかけるシーンもくどいし、後半の父息子の会話も表情だけで伝わるのに全部台詞にしているのもくどい。エンドロール後のお楽しみにつながる付箋になっているとはいえ「キャプテンUDON」という特撮は果たして必要だったのでしょうか?
あれもこれもと盛り込み過ぎたと思える分 監督の思いが強いとも言えるかもしれませんが・・・。
それにしても醤油で食べるうどんがあるとは知らなかった〜。「裏で勝手にネギ掘って」というシーンが受けた。改めて考えると讃岐うどんってもしかしたら食べたことないかも。是非シンプルなの食べてみた〜い。




2006/8/26 【 母たちの村 】

カンヌ映画祭「ある視点部門」グランプリ受賞作「母たちの村」を観ました。
電車を何回も乗り換えて岩波ホールまで行かなくても、家を出て15分後には映画館でこのような良質な岩波上映作品を 先週の「家の鍵」に続いて観られることは本当にありがたい。でも観客4人のみというのは寂しい限りです。秋田の皆さん明日まで上映しているから行ってみてぇ〜。
セネガル映画(仏との合作)ということで西アフリカのなんとものどかな村が舞台。
「割礼」って宗教的に男性がするモンだという先入観があったのですが、この映画は女性への割礼。うひゃぁ 古くからの風習とはいえひっどい現実。そうこれ昔話かと思いきや、アフリカでは今でも30カ国で女性の割礼が行われ、そのために命を落とす子どもたちが後を絶たないというまさに現実の告発的メッセージの強い作品。これぞ男尊女卑という強硬派の長老陣に加勢している実行グループが女性軍団なのも興味深かった。
パワー溢れる歌声にマッチするようにのどかで素朴な村の風景と家々にカラフルな衣装や雑貨が映えていますが、敢えて言わせてもらえば極力虫や糞を抑えたことで映像キレイ過ぎかも。





2006/8/19 【 家の鍵 】
イタリア国内で65万人の動員の大ヒットを記録した岩波上映作品「家の鍵」を観ました。
障害をもって生まれてきた息子と15年ぶりに初めて対面した父親の心の葛藤へ視点をあわせ丁寧に描いています。所謂イケメンオーラでいっぱいの超美形俳優キム・ロッシ・スチュワートを父親役にすることで、カッコつけてられない厳しい現実と向き合わせている効果はすごい。同じ理由でやはり障害者の娘の介護を20年している母親にシャーロット・ランブリングを起用したのも大正解。似つかわしくない母娘、父子だけに外見から想像できない背負っているものの大きさを感じさせられます。ところで自分の人生を娘に捧げ介護について達観したかのような母親が、苦悩をみせる唯一の駅のシーンは圧巻で、この後の台詞がなくても表情だけで悲しみや苦しみが十分に伝わってきます。
この作品のすごいところは父と息子の立場をラストのラストで逆転させている点。
決して「介護する側される側」とか「与える側与えられる側」 という一方通行で終わっていないのが良い!
  




2006/8/8 【 かもめ食堂 】

allフィンランドロケの「かもめ食堂」を観てきました。
フィンランドといえばそうやっぱりムーミンの国!! ということで、ちゃ〜んとムーミンネタもいくつかありました。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ の個性派女優はさすがの存在感。舞台挨拶でもたいまさこが「たる〜い映画です」と言ったのが、良い意味でうまく表現しているかも。終始淡々とした空気感がなんとも心地良い。
ふわふわのシナモンロールとおいしいコーヒーはもちろんのこと素朴な和食が飾り気のないヘルシンキという街にとっても合うみたい。一見ありきたりなおにぎり、焼き鮭、生姜焼き、から揚げ、肉じゃが、卵焼き、とんかつもとっても美味しそう。お店も主人公の部屋も食器もシンプルで、それが考え方や生き方にも通じていてステキ。ゆったりとした時間とおいしいごはんって幸せのキーワードかも。チラシにもある「ハラゴシラエして歩くのだ。」というサブタイトルもぴったり。
あっそうそうそうフィンランド映画「過去のない男」では絶妙な間で圧倒的な存在感を出していたマルック・ベルトラも出演しています。「過去のない男」で日本語のクレイジーケンバンドの曲が妙にマッチしていたことからも、フィンランドと日本ってやっぱり実は何かと通じるのかもネ。イイネ!!





2006/8/1 【 ゲド戦記 】
宮崎駿監督の長男である宮崎吾朗が初めて監督に挑戦したという話題作。宣伝効果もあって興業面では出足が良い割には評価は厳しいようです。
映画館で観損ねた「ハウルの動く城」を先日TVで観て、かなりがっかりしたのですが、このゲド戦記もハウル並にイマイチ。声そのものへの違和感はないものの「ハウル」ではキムタク「ゲド」では岡田君とジャニーズの起用も個人的には気に入らない。まぁ評判が良くないと知った上での鑑賞だったので、思ったよりは落胆しなかったのは果たして良かったのかどうか・・・。
原作が相当しっかりしているようなので、やり方によっては面白そうな内容です。ジブリ作品といえば文句なく面白さが保証されていたのは過去の話なのでしょうか?
既に原作を読んだ観客にはどう映ったかわかりませんが、原作を読んでいない身としては、説明不足が度を越していて、消化不良。文句言う前に原作読んだほうが良いかもしれませんが、アレンが父親を刺す過程、剣にまつわること、テルーと龍の関係、テナーとゲドの関係、モアとゲドの関係etc はどうなんじゃい。但しテルーの澄んだ歌声は良かったけど・・・。館内には幼児連れのファミリーも多かったようですが、泣き出す子もいたようです。トトロっぽさを期待していたのかもしれませんが少なくとも幼児向けではないでしょう。




2006/7/19 【 日本沈没 】

小松左京原作。33年前に映画化し一代ムーブメントになっていたものをリメイク。

制作費20億だけあって当時とは比べものにならないCGで、地震・噴火・津波や各地の崩壊シーンは見応えありました。まぁある意味、北海道から九州まで日本各地巡りができたことは良かったかも。大筋はわかった上での鑑賞ですが「インディペンデンス・デイ」「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」etcと被ります。これはパニック映画だから仕方ないとしてもそれにしても大味。小野寺(草g剛)と玲子(柴咲コウ)の恋愛もリアリティーがなくて感情移入できない。つっこみどころも多く、主人公があれだけ各地に被害が出ている中、静岡・東京・福島を自在に移動できちゃうし、避難中の知人に会う偶然性?も無理あり過ぎ。





2006/7/10 【 間宮兄弟 】
30歳過ぎた仲の良い(良すぎる)兄弟の話。
大人になりきれない兄弟というかある意味子どもがそのまま大人になったような感じ。純情な2人の日課の反省会・ビデオ鑑賞そしてじゃんけんぽんetc・・・そのなんだか説明できないおかしさが淡々と描かれています。恋には不器用で「いいひと」止まりの要素だらけだけれど、真面目で小さな幸せをいっぱい知っているこの兄弟は魅力たっぷり。いいじゃん。大人になれない男だって。
2人を見ていると自分がいつから子どもじゃなくなったのかな?なんて考えてしみじみししゃいます。ボードゲーム、トランプを最後にやったのはいつのことか?
それにしても最後まで疑問だったのが兄弟が隣のマンションを覘くシーンが多かったこと。あれは何の意味だったのかわかる方いたら教えて下さい
 




2006/6/24 【 白バラの祈り 】

本年度アカデミー賞の外国語映画賞ノミネート作品「白バラの祈り−ゾフィー・ショル、最後の日々」を観ました。
反ナチスのレジスタンス運動「白バラ」のメンバーであった21歳の女子学生ゾフィー・ショルが兄と共に捕らえられてからの5日間を描いた実話。

予告編とこの丁寧な邦題からあらかた察しがついたので、内容的には本編は予想通りでした。ゾフィーを取り調べる尋問官ムーアのやりとりは心理的駆け引きがあり緊迫感に溢れていて良かった。嘘も本当も含めて全編にヒロインの聡明さが伝わります。裁判での兄妹の一貫した全うな態度、立ち向かう姿のなんて清々しいことか。この親にしてこの子ありという凛とした親子関係も秀悦。それに対比する裁判官がヒトラー狂信者で聞く耳持たずのまるでステレオタイプのナチ派。  狂っているこの状態での通常49日かかるものが1日で終わってしまった裁判の異常性もよく描かれています。ラスト近くの煙草のシーンが良かった。ただ残念なのはやはりこのわかり過ぎる邦題でしょうか。な〜んかダサいのよね。





2006/6/10 【 ダ・ヴインチ・コード 】

バチカンがキリストを冒涜していると非難し、信者に映画をボイコットするよう指示したことが逆に宣伝になったような何かと話題の「ダ・ヴィンチ・コード」を観ました。

映画公開前に、タケシのTV番組で「最後の晩餐」の謎等核心に触れるネタ晴らしとも思える説を既に観ていたので、映画としての面白みは半減。っていうか公開前のこーいう特番に疑問(←この番組を自ら観ておきながら言うことではないけれど(-_-;))。
聖書の中身についての会議でキリスト以後の権力者が都合の良いものを集めて作成している様子、ルーブル美術館・テンプル教会・ロスリン教会・ウエストミンスター寺院などの建築を見られたことは収穫。「子午線」と「ローズ・ライン」関係の真偽はわからないけれど原作者ダン・ブラウンが注目したサン・シュルピス教会を一例として着眼点はすごい。
でも、トムハンクスの謎解きもいくらその道「象徴学」の権威とはいえご都合良過ぎなのと、キーパーソンのソフィは暗号解読官ながら一つも解読できてないし、肝心の「最後の晩餐」の聖杯の謎解きを主人公とは対極の立場の人間がするし、しかもそれを聞いている主人公の表情も驚くでもなくビミョウetc・・・となんだかなぁ・・・。全体的にテンポがとにかく速いので、こちらが謎解きに感心したり余韻に浸る間もなく、簡単に?答を出していくという感じでなんとなく、観客に優しくない作品という印象でした。
と私は辛口感想でしたが、一方影武者さんは楽しめたようで鑑賞後にその足で「最後の晩餐」のポスターを購入←単純。それにしてもどこに貼るんじゃい(-_-;)
  




2006/6/5 【 嫌われ松子の一生 】
「嫌われ松子の一生」を観ました。
山田宗樹の原作のオビに中島哲也監督の「松子の一生は、真珠夫人より100倍波乱万丈で、ヒロシより100倍不幸続きで・・・松子という人に会ってみたくなりました。どうすれば会える?これは自分で映画にするしかない!と決意しました。」という言葉があったので、やはり松子に会いたかった私は映画の公開を長く待ちわびていました。が、予告編を観てビックリ。な、な、なんだこれはぁ。壮絶な人生の光と影を描く傑作巨編がなんとまぁポップでファンキーでパンクでアートでサイケでキッチュでファンタジーなことか。これには、「なんで正統派で撮ってくれないのよぉ」とがっかりしたのですが、本編を観てその危惧もふっとびました。
期待しなかったのが功を奏したのか、CGや歌詞に説明を加えることでミュージッククリップ風に見せながら描く手法を使っているのが全然変じゃない、って言うか この監督凄いかも!!原作にはないラストの演出もとても良かった。
そして何より主演の中谷美紀は「私は松子を演じるために女優という仕事を続けてきたのかも知れません」と言うだけあってまさにはまり役。愛すべき松子=中谷美紀で心に深く刻み込まれました。




2006/5/25 【 スタンドアップ 】
上映会で実話に基づいたという「スタンドアップ」を観ました。
夫の暴力に耐えかねて実家のあるミネソタに戻ってきたものの10代で父親のわからない子どもを生んだ主人公を見つめる周囲の冷たい目からして、先行きが案じられ、そして鉱山という男社会の閉鎖的な環境で待っていた執拗な陰湿なセクハラ・・・。まだ「セクハラ」という言葉が一般的でなかった時代もちろんセクハラが法律で禁じられる前とはいえ今や権利を守ることでの先進国アメリカでここまでひどいことが1975年というそんな昔じゃない時代に起きていたことに改めて驚きます。これはイメージしていたセクハラの観念を遥に覆すくらいの壮絶ないじめと暴力。それに耐えて口をつぐんででも収入が必要だった女性達がいても不思議じゃない。生活がかかっているんだもの。
そんな中で立ち向かう主人公をシャーリーズセロンが演じていますが、シャーリーズセロンの母親が自分と娘を守るため暴力をはたらく夫を殺害した(正当防衛)という背景があるだけにこの役柄はあまりにリンクします。家族を守る為一歩を踏み出した精神的な強さはたいへんなもの。ただ、自分のせいでいじめにあったりしている子どもを見て、自分を責めるような弱い面を見せてくれたらもっと感情移入できたかも。同じ鉱山で働く主人公と確執がある父親が仲間の前で言う台詞が良い。親ってこーいうものなのね。
原題は「North Country」ですが台詞にもある「スタンドアップ」という邦題が、より内容にマッチしたタイトルになっていると思います。




2006/5/16 【 ホテル・ルワンダ 】
ホテル・ルワンダ」を観ました。

1994年アフリカのルワンダで3ヶ月に100万人が殺害され300万人が国外逃亡したというフツ族によるツチ族の虐殺。たった12年前の実話。主人公は最初からヒーローだったわけでも気高い思想に基づいたわけでもなく、家族を守ることだけを考えていた1人の父親。あくまで成り行きで1200人を救うことになったというのがなんか親近感みたいなのが持てる。国連から見放され、食料も尽き、いつ皆殺しになるかわからない状況下でも、ビシっとネクタイをしめホテルマンとして振舞う主人公のプロ意識がとても印象的で、ドン・チードルが壮絶な光景を観た後、それでも平常にネクタイを締めようとするシーンは圧巻。
ルワンダの虐殺の報道があっても日本や欧米諸国が無関心を決め込み、ルワンダ駐在の国連の平和維持軍はあまりに無力だったけれど、これを簡単に批判することはできない。というのもジャーナリストの「この映像を世界に流してもみんな‘怖いね’というだけでディナーを続けるんだ」の台詞にあったようにそれは私自身にもあてはまるから。自分もまぎれもなくルワンダを見捨てた一員なのでしょう。その痛い現実に気付かせてくれるからこの映画は観るべき作品といえるかも。





2006/5/8 【 クラッシュ 】

本命視されていた「ブロークバック・マウンテン」を破って、アカデミー作品賞に輝いた「クラッシュ」を観ました。

どこかの保守的な映画監視団体には「今年最も俗悪な映画」賞として選ばれたそうですが、ここまで暗部をえぐっているのは見事。色々な人生が交差しそれが連鎖していくという群像劇は見応えあってさすがにアカデミーで脚本賞を受賞しただけあります。

LAの黒人・白人・ヒスパニック・アジア・アラブ系etc人種差別を軸に、ののしり傷付け合う人間の醜さ怒り哀しみ憎しみ孤独を描きながら、みんな本当はふれあって何かを実感したい と絶望だけで終わっていないヒューマンドラマでした。ロスに降るあの雪には希望を象徴したいという監督の意図があるそうです。人間は他人を自分のものさしで判断しがちだけれどそれがどれだけ曖昧なものか・・・史記の「禍福は糾える縄のごとし」ってのが人間性にも言えるというところでしょうか。





2006/4/21 【 僕が9歳だったころ 】

韓国ベストセラー小説「9歳の人生」を原作した「僕が9歳だったころ」を観ました。今は既に学校から体罰がなくなり1対1の喧嘩を制したガキ大将もいなくなり・・という時代だけに1970年代に9歳だった人が見ると、良い悪いは別にしても自分の体験と重ねられ、韓国の小学生というより自分の体験として懐かしく思えるかもしれません。但し日本と違うのは子どもでも徹底した儒教精神をまとっている点。それにしても9歳って体は子どもでありながら話すことは一人前なのね。なのに思慮が足りなくて残酷でモノを知らなくてとってもアンバランス。興味深かったのは、どんなに高慢で性格が悪くても、男ってのは女を見た目で好きになるっていう片鱗はもうこの9歳という年齢でちゃんと形成されつつあるってのがよーくわかったこと。しょーがないなぁ() 当時の9歳は現在どんな大人になっているのでしょうか。





2006/4/14 【 僕のニューヨークライフ 】

ウディ・アレンの「僕のニューヨークライフ」を観ました。ビリーホリディをはじめとしてノシタルジックなjazzが流れ独特の雰囲気が味わえますが満足度としては微妙。というのも今回ウディアレンは作家兼学校教師役で 悩める青年にアドバイスするのですが、その際の哲学的な書籍の名言を引用したジョーク交じりの答えは字幕で追うのがやっとで特に前半はついていけなかったから。なかなか含蓄ある内容ながら所謂マシンガントーク故にちゃんと堪能するには語学力が大事かもと痛感。主人公が、仕事とプライベートで、恋人やその母親や、マネージャーやらに振り回されまくるのを今のニューヨーク色をとっぷり入れてコミカルに描いています。911テロ以後はライフルの逸話もまた夢カウンセリングもニューヨーカーの今なのでしょう。但しクリスティーナ・リッチ演じる節操のない身勝手な恋人像がもし実際のニューヨーカーを象徴しているとしたらかなりコワイけど・・・(-_-;)。なんでもウディアレンは日本公開ではこれを最後に長年暮らしたNYを離れてロンドンに拠点を移したそうです。そういう意味でも街並みのシーンは最後にウディが胸に刻みたかった場所だったかのかも。そういえば主人公達が繰り出すお店はジョン・コルトレーンやビル・エバンス等の数多くの名演が生まれたジャズクラブの老舗「VILLAGE VANGUARD」でした。いつか私も行ってみた〜い。





2006/4/12 【 タイフーン 】

韓国で観客動員新記録を樹立した「タイフーン」を観ました。韓国映画史上最大の制作費をつぎこみ タイ、韓国、ロシアを舞台に10ヶ月という長い撮影期間を経て完成した大作でハリウッドメジャーによる北米での公開も決まっているそうです。確かにハリウッド映画かと思うような驚くほどの迫力とスケールでした。主演の海賊のシンを韓国四天王の大人気のチャン・ドンゴンが演じているせいか映画館は満席状態。このチャンドンゴンは一目見てアレ?と思うほど痩せていていましたが なんでも7`の減量したそうで精悍になって更にパワーup。目力も凄くて主人公の犯罪行為の奥にあったあまりに悲しい辛い過去から生まれた怒りを力強く物語っています。対する軍人役セジョン役のイ・ジョンジェの存在感も良いです。あまりにあまりな任務等や人間関係に何箇所か泣きそうになるシーンもありました。と、ここまで褒めてきましたが内容的にはつっこみどころはいっぱい。未見の方はこの先は読まないで下さい。

細かいところつつくのは止めますがこれだけは言いたい。まるで ‘特攻隊’ とも言えるセジョンは片道の燃料だけで飛んだはず。飛んだ後に知らされたアメリカの潜水艦等の計画変更はあったとはいえ、そこらの詳しい説明を省いている為に で、何で生きてんの?何で死んでないワケ?とギモ〜ン。突撃前に死を覚悟した母への手紙で涙を誘っておいてこれはないよ〜(-_-;)





2006/4/9 【 プロデューサーズ 】
2001年にトニー賞を12部門受賞したブロードウェイのミュージカルを映画版として完全リメイクした「プロデューサーズ」を観ました。大金を手にする為に2人のプロデューサーが「最低の脚本」「最低の演出家」「最低の役者」が揃った「最低のミュージカル」の為に東奔西走するコメディーミュージカル。笑えるかというと私は笑えなかった。それはネタがベタだとかそーいうことではなく笑うより登場する濃いキャラクター達のあまりの芸達者ぶりに口ぽかん状態だった為。2人のプロデューサーは実際にトニー賞の際にブローデウェイの舞台で主役を演じていたオリジナルキャストのコンビだそうで驚くような存在感。また最低の演出家のゲイ役の面々もしかりで、芸の見本を観ているようでした。今まで気にしたことはなかったユマ・サーマンも良いスパイスです。P.S.先程笑えなかったと書きましたが笑ったところありました。それがエンドロール。あっエンドロールが終わってからも楽しめるので最後の最後まで席を立たないでくださ〜い。




2006/4/7 【 ブロークバック・マウンテン 】

ゴールデングローブ賞主要4部門受賞、2005年ヴェネツィア国際映画祭グランプリなど獲得し、アカデミー賞の最有力と言われながら監督賞にとどまった作品。20歳の時にブロークバックという山で知り合った2人の男性の約20年の困難な愛。主人公はストレートなジャックと無口で朴訥とした不器用なイニス。それぞれ年齢を重ね家庭生活を送りながらの哀切がとても丁寧に描かれています。「ゲイ=死」という背景も気の毒ですが事実を知ったヒースの奥さん悲しさも計り知れない。余談ですがヒースレジャーと奥さん役のミシェルウィリアムズは実生活でもカップルだそうです。一方ジャックの奥さん役は若い頃はともかく20年後の金髪が似合わないこと。美人なのでしょうがまるでドラッグクィーンのようなけばさでした。影武者さんはこの映画を観に行くことに断固抵抗しましたがこーいう男性は多いようです。私からすれば新宿2丁目に行った時にこちらの心配をよそに新宿公園のトイレに平然と行けたのに何の体裁を考えたのかよくわかりません。エンドロールの1曲目♪He was a friend of mine♪のウィリーネルソンの歌(ボブディランの曲)がまさにこのイリスの心境そのものを歌っていてあまりに切なくてジ〜ン(:_;)





2006/4/5 【 RIZE 】
シネマライズで初日2日間の成績では(GAGA作品中)歴代記録となった「RIZE」を観ました。憤りと怒りをダンスにぶつける‘闘い’と称され現在「クランプ・ダンス」と言われる攻撃的なダンスは、創始者トミーザ・クラウンの「クラウン・ダンス」から発展したもの。冒頭に「この映画の中のダンスは早回しではありません」とテロップが出るのですが、確かにスピード感が凄まじい。全米で最も危険な街を語るに十分なL.A.サウスセントラルで生きていくには「ギャングorピエロ」の選択しかない と言い切る若者達の言葉に絶句。allダンス映画ってだけで行ったのですが、あまりの迫力に大会(バトル・ゾーン)では感動でじ〜〜んとなりました。今作が映画デビューとなるデヴィッド・ラシャペル監督は、新進気鋭の天才フォトグラファーというだけあって映像が多角的で鋭い。高揚感・美しさ・力強さをこれでもかと魅せてくれます。「I got to rize」と言う台詞の重さも感じました。




2006/4/2 【 風の前奏曲 】
2004年タイのアカデミー賞と言われるスパンナホン賞で作品賞など主要7部門を受賞した「風の前奏曲」を観ました。主人公がタイの民族楽器の「ラナート」奏者として成長する過程と、晩年に音楽家としての地位を確立してからを同時進行で描いています。風のシーンそして雨のシーンと自然と一体化した音色が圧巻。ライバル役のクンインは実際のラナート奏者だそうでタイでは絶大な人気があるとか。確かに音楽だけでなく目力を始め全体からかもし出されるオーラは半端じゃないです。近代化イメージの為に古くさいとして伝統音楽を排除しようとする動きがあった中での主人公の凛とした態度が良かった。そういえば日本の伝統音楽というと雅楽ということになるのでしょうが、雅楽=東儀秀樹くらいしか思い浮かばない(-_-;)。東儀秀樹も現代音楽と雅楽のコラボをしていますが、主人公がピアノとコラボするシーンはとても印象的でした。




2006/3/25 【 疾走 】

直木賞作家、重松清の原作を映画化。
「運命とは双六盤であり、そのマス目のどこに停まってどこを飛ばすかが人生であり、さいころの目がほんの1つ違ったために不幸せになってしまうことがある」という神父の台詞がこの映画を物語っているよう。
随所に聖書の言葉をからませながら拠り所にしていますが、主人公の15歳の少年はとにかく悪いマスにばかり停まり続けます。この堕ち方があまりに容赦がない。ナレーションが主人公を「おまえ」という2人称で呼んでいる存在がずっと気になっていたのですが、神父の言葉を借りた神の声のようにも受け取れました。

小さな店のシャッターに「私を殺してください090-XXXX-XXXX」「誰か一緒に生きてください090-XXXX-XXXX」と書くシーンは痛すぎ。映画後に原作を読みましたが難しい内容をかなり忠実に描いていたようです。主人公の手越祐也はジャニーズのNEWSのメンバーだとか(知らなかった(-_-;)その意味では原作の過激シーンのはしょりは仕方なかったかも。加えて原作ではラストが途中から予想されますが映画ではそこを上手くかわして意外性を感じられる終わり方にしているのが逆に良かった。





2006/3/24 【 真夜中のピアニスト 】

2005年ベルリン映画祭銀熊賞(最優秀音楽賞)受賞のフランス映画。不動産の闇ブローカーとピアニスト、父と母、暴力と芸術、現実と夢という対比が見事にリンクして、この相対するものが主人公の中にいるがゆえの苦悩を描いています。きれいごとで済まされない仕事とはいってもこの闇ブローカーの仕事がひどいです。実際にこの業界の方の話を聞いた上での役作りというから現実的なのがなんともやりきれません。力ずくで住人を追い出しその血だらけの手でピアノに向かうなどというギャップが良い効果なのでしょうけど…。不安定な精神状態で言葉の通じない中国人ピアノ指導者とのレッスン場面も印象的。この映画で1番良かったのはなんと言っても2年後のエピローグ。そーいう形での夢に向かう道もあったのかと えっ?という展開になんだか嬉しくなりました。





2006/3/11 【 ある子供 】

2005年度カンヌ映画祭パルムドール賞受賞作品。親になったばかりのこのカップルのじゃれあいを見ても漂うのは幼さばかり。自分に無関心な母親との家庭環境のせいなのか父親になった主人公=ある子供は愛を知らない。彼女への気持ちも愛というより‘彼女に捨てられたくない’というだけに見えちゃう。あきれるしかない彼の行動の幼児性をこれでもかと徹底的に描いたあと、自力で得ることになるこれまでにない新しい感情。厳しすぎる現実の生活を考えるとこの先どう変われるかわからないし何の保障もないけれど一歩踏み出せるんじゃないかと思わせてくれた唐突なエンディングと音の無いエンドロールの説明をとことん省いたリアリズムは秀悦。





2006/3/8 【 乱歩地獄 】

江戸川乱歩の4つのオムニバスから成る「乱歩地獄」を観てきました。4作とも監督が違うのでカラーがそれぞれ。R-15指定だけあって血のシーンも多く精神的に弱い時は避けた方が良いかも。「世にも美しいスウィートな地獄」ということで異世界や禁断の夢の話です。
@「火星の運河」抽象的な原作をどう映像化するのか興味ありましたが、原作同様よくわからない()。台詞の無いアートな感じでまとめたようですがこれだけ観ても?肝心の紅を描いていないので「火星」とリンクできない。A「鏡地獄」成宮ファンもビックリするほどにストーリーを変えたのが疑問だし、実相寺監督ということで「姑獲鳥の夏」の二の舞で陰鬱さが物足りない。B「芋虫」大森南朋が本当に芋虫のように見えたのはすごかったけれど、これもストーリーを変え過ぎ。イコール原作に登場しない松田隆平は居なくても良かった()コンクリート住宅や服装などモロモロが大正という時代設定にマッチしていない。C「蟲」一転してポップカラー。ヒロインの緒川たまきの美しさと声は圧巻。浅野忠信は潔癖症以外はあまり異常という感じがしなかった。「なんなんだ?」と台詞を連発するシーンに「この映画こそなんなのよ」と言いたくなるし、ブリーフ一枚のシーンがやたら多くコミカルな部分が疑問。どろどろにダークな重いタッチで描いて欲しかった。もっと薄気味悪くもっと不気味に〜〜。





2006/2/22 【 単騎、千里を走る。 】

ここんとこエンターテイメント路線も手がけてきていますが、昔からのチャンイーモウ監督ファンの期待を裏切る事のない大陸系ヒューマンドラマ作品。好きな路線なのでとっても期待して観ました。寡黙で頑固な役柄があまりにもぴったりで、監督が前から高倉健の映画を作りたかったという熱い思いがよ〜く伝わってきます。

雲南省をはじめとする壮大な風景と人々の暮らしも、素人とは思えない現地の人々の豊かな表情もとても見応えありますが、唯一不満を言うと、予告編やTV放映されたメイキング「張芸謀 高倉健 心の旅」で既に観ていた以上のものはありませんでした。この映画に限らず予告編で良いところ惜しげもなく見せちゃうのはサービスといってもある意味考えものかもしれません。ところで、エンドロールを見て判明したのですが、「辺ぴな漁村に逃げやがって」と息子に言われたその漁村とは、なんと なんと秋田の男鹿でした(-_-;) 地元では高倉健が撮影に来ていたのに話題にもならなかったのは、「辺ぴ」と言われたせい?





2006/2/21 【 ミュンヘン 】

スピルバーク監督の社会派映画「ミュンヘン」を観ました。1972年のオリンピックで11人のイスラエル選手団襲撃事件の報復の暗殺チームの任務と苦悩。殺しても後継者が出てくる終わりのない攻防。この手の映画はよく敵側をゾンビのように描くことが多いですが、スピルバーグがユダヤ系なのにイスラエル側だけではなく、パレスチナの犯人サイドのテロリストも人間味のある人物だという視点でも描いています。(これが皮肉にもユダヤ系が多いアメリカの中ではブーイングになっているとのことです)何度も登場する食事の場面を始めどうということのない日常や家族を描くことで、本当にごく一般的な感覚を持った人が絡んでいたことに今更ながら驚きます。テロに屈しないと報復している方針は現在も某国と重なりますが、イスラエルの国家の為の仕事をしても最終的にはモサドに協力を拒みイスラエルに戻れなくなってしまう主人公像にアイロニーが語られているのかも。フランスの情報屋一族はまるでゴッドファーザーのコルネオーネ一家みたいで存在感は見応えあります。





2006/1/29 【 博士の愛した数式 】

小川洋子の大ベストセラーを「雨あがる」「阿弥陀堂だより」の小泉監督が映画化。前作のように淡々としながらも移り変わる季節の映像がお見事。素数・友愛数・完全数・オイラーの法則にピタゴラス・フェルマー・デカルトも登場する吉岡秀隆先生の授業を受けながら、博士とその家政婦と子の話が展開していきます。この手法も授業そのものも面白かった。ただ80分の記憶しかないという設定の単位は1日単位くらいにもっと長く感じたのと、出演者の中で義姉役の浅丘ルリ子がどうも存在感あり過ぎて浮いている気がしたのは私だけでしょうか。暗闇の窓の外にたたずんでいる姿はホラーのようで怖かった。この監督の前作もそうでしたが今回も登場人物がピュアで良い人なので地味ながら心がほっとあったかくなれました。





2006/1/20 【 ヴェニスの商人 】

シェークスピアの作品を「イル・ポスティーノ」のマイケル・ラドフォードが監督・脚本。
ルネサンス期のヴェニスを舞台に絵画のような映像が堪能できます。ユダヤ人シャイロック役のアル・パチーノは圧倒的な存在感でそれに比べてキリスト教徒が軽薄〜。それにしてももしかしてこれがこの作品のテーマかと思うくらい「女は一枚うわて」だわねぇ。裁判シーンでの‘とんち’はまるで一休さん。(シェークスピアと並べるのはヒンシュクかなぁ)そこまでは良いとしてもその後の指輪で旦那までやりこめるのは う〜ん・・・。それに比べて男どもの頼りないこと・・・。バッサーニオは無一文の情熱家と言えば聞こえは良いけれど求婚は打算だし単なる放蕩者じゃん。ってことでバッサーニオにも旦那を試したりする姫にも感情移入などできるバズもなく、ただただシャイロックの哀しみが心に浸みました。
影武者さんまで「ああいう風によってたかってユダヤ人いじめるからフリーメイソンなんかできちゃって 裏世界を牛耳られるんだ」と珍しく?ユダヤ人に哀れを感じたようでした。





2006/1/16 【 THE 有頂天ホテル 】

半年に1度くらいにある胃痛で数分おきに胃がきりきりしながらの鑑賞。このくらい体調が悪くてもコメディだからいいかと思ったのですが・・・具合悪い時のドタバタコメディは疲れたぁ。多くの出演者それぞれにエピソードがあり上映時間と同じく年が明けた2時間後にはそれぞれ輝いていたというハッピー気分をもらえそうな内容だけに何故大晦日を狙った年末あたりの公開にしなかったのでしょう。ホテルというひとつの建物の中で人がひしめきあいドタバタやっているのを観るのは、まるでターミナル駅のコンコースの雑踏をかきわけ歩くような疲労感でした。クスッとする箇所は多いのですがオダギリジョーや唐沢寿明や西田敏行や伊東四朗がやるから面白いというように、これは台詞より豪華俳優陣によるところが大きいかも。





2006/1/13 【 親切なクムジャさん 】

パク・チャヌク監督の『復讐三部作』の第3作の「親切なクムジャさん」を観ました。
なかなか面白いタイトルです。「復讐者に憐れみを」は未見ですが「オールドボーイ」がけっこう凄かったので、期待していたのですが、う〜ん 3部作のトリとしてはイマイチ。ひっかかりとして、クムジャさんは全然無実じゃない・ペク先生の通訳が余裕ありすぎ・待ちに待った復讐時にとどめを刺せないetc・・・なんだかなぁ。
第一に美女の復習劇としてはなんといっても数年前のインド映画「アシュラ」(副題は‘地獄曼荼羅’)があるだけにインパクトはこれより弱かった。イ・ヨンエが美女とはいえインド美人の比ではないでしょう。そういえば事件的にリンクする点もある宮崎勤の最高裁判決の時期です。「復讐」をしても達成感や満足感が得られるのではない上に無くしたものは戻ってこないと分かっていても、殺したい程、人を恨んだ経験があるならそう思うのは自然な感情。悲しいけれどどうしようもない。さて、皆さんはそこまで人を恨んだことはありますか?
  





2006/1/7 【 男たちの大和/YAMATO  】

去年から戦後60年ということで戦争映画上映が多かった中、ローレライやイージスよりダントツに良かった。約6億円をかけて原寸大190mを再現したというYAMATOは圧巻。
映画評には「タイタニック」「パールハーバー」「プライベートライアン」「ブラックホークタウン」etcのどっかで観たようなシーンに‘二番煎じ’という声もあるようです。が、私は邦画のスケールとは思えない迫力の戦闘シーンと壮絶な覚悟と想いに圧倒されっぱなしでした。YAMATOに向うアメリカ軍艦催機はこれでもかという数で新鋭空母12隻、艦載機およそ800機、大和の護衛機はなかったとか。無謀としかいえない軍の計画に従うしかなかった組織の中で下層部のまだ1617歳の少年と言える兵士達をきちんと描いていて、死の決戦の直前に思い思いの人の名前を叫ぶシーンには言葉がありません。更に奇跡的に生き残った者の苦悩に焦点を当てた点も良かった。それにしても大切な人が死を覚悟しているのを受け入れる周囲も、今生になるかもしれない別れを告げるというのはあまりにも悲し過ぎます。
  


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